人生終了のお知らせが届きました
オラオラ調の巻き舌で凄まれ、紗理奈は肩をすぼめながら後ずさった。築ン十年、ボロアパートのドアが背中にあたる。
仕事帰りを待ち伏せされて、逃れられない状況。 せめて、部屋には入れたくない。
「す、すみませんっ」
「内藤真帆のところなんざ、とっくの昔に行ってんだ。その内藤が飛んだから、代わりに高橋サンが支払う。保証人の意味わかってんだろ!」
Vシネマにでてくるような黒いスーツのこわーいお兄サンふたりに紗理奈は見下ろされ、絶体絶命のピンチだ。
「でも、保証人とか言われても困ります。」
こわーいお兄サンは口元をニヤリと歪め、紗理奈の目の前に1枚の紙をひらひらさせた。
それは、額面300万円の借用書。
確かに、紗理奈の自筆でサインが入っている。でも、借金の保証人になった記憶が無いのだ。
(最後に真帆に会ったのは、確かDV彼氏から逃げたいと相談に乗った日だったはず……。
あっ、もしかして、真帆からアパートの保証人を頼まれた時に、サラ金の借用書もサインさせられたのかも……)
そう思いあたると、頭の中で”チーン”とおりんの音が鳴り響く。
「じゃあ、高橋サン。これから事務所で返済の相談をしましょうか」
こわーいお兄サンに紗理奈は両脇をしっかり固められてしまった。
(積んだ。完全に詰んだ。ああ、人生終了のお知らせだ……)