人生終了のお知らせが届きました

寂しい夜は、一緒に居たい

 孝弘と暮らし始めて、何事もなく、平穏無事な半月が過ぎた夜。
 紗理奈はため息まじりで、スマホをタップした。
 画面に表示された時刻は午前0時02分。
仕事が忙しいと言って、孝弘は毎日午前様の帰宅なのだ。
それも、付き合いだとかで、お酒の匂いをさせて帰って来るものだから、仕事と言うのも疑わしい。

「はぁー。今日も仕事が忙しいのかなぁ。それとも、誰かとデートとか……」

 そう口にした途端、紗理奈は否定するように首を振った。

「タカ兄に、付き合っている人が居るなら、わざわざ一緒のマンションに住まわせたりしないはず」

 広すぎる部屋は、家主の滞在時間が短くて、散らからないから掃除も苦にならない。食事を頑張って作ってみても、結局は紗理奈の胃袋に収まっているのだ。
 孝弘にしてみれば、家政婦と言う名の居候を世話しているような状態。
 一緒に暮らしていると言っても、孝弘と紗理奈の関係は、雇用主と家政婦。正確に言えば、債権者と債務者。
孝弘が何時に帰って来ようが、紗理奈には文句を言う権利など何一つ無かった。

ただ、同じ空間で生活をしているのに、会話が無い生活は寂し過ぎる。
孝弘に取って自分の存在など、取るに足りないのだと、頭ではわかってはいるけれど、ひとりで過ごす夜は長く切なかった。
 リビングの窓から見える横浜港の夜景は、美しくもあるが、ひとりぼっちの孤独を感じさせられた。
 
「一緒に暮らして居るんだから、せめて”おやすみ”って、言いたいなぁ」

ソファーの上でクッションを抱きしめ、孝弘の帰りを待っているうちに、ウトウトと眠気が襲ってくる。紗理奈は重たくなる瞼を擦るが、睡魔には勝てずに、ソファーの上に倒れ眠ってしまった。
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