人生終了のお知らせが届きました

 幸い窓際の席が空いていた。紗理奈は、お弁当箱をテーブルの上に広げる。
 孝弘のために用意してあった夕食のブリの照り焼きや、ほうれん草の胡麻あえ、きんぴらごぼうなど、気合を入れて作ったメニュー。せっかく作ったのに食べてもらえずにいて、仕方なくお弁当箱に詰めて来たのだ。
 生姜焼きのA定食を前に、満がお弁当を覗き込んで来る。

「へー、旨そう。最近、ずっと弁当持って来てるな」

 褒められた紗理奈は、エッヘンと胸を張る。
 もちろん、残り物を詰めたのはナイショなのだ。

「ふふっ、なかなかやるでしょ?」

「紗理奈は良い嫁さんになれるよ」

 営業職の満は、髪を短く切り揃え爽やかな印象の好青年だ。
 けれど、モグモグとご飯を頬張る姿は、やんちゃな小学生男子のよう。
 それもこれも、幼なじみの気の置けない関係だからこそ見せる表情だ。

「どうかな。今はスマホでレシピが簡単に見れるし、誰でも作れるよ。それに、まだ二十歳(はたち)だよ、結婚とか全然考えられない」

 自分の作った借金じゃないが、負債を抱えた身。当分、恋愛や結婚など考えられず、作り笑いでごまかす。
 しかし、料理を褒められて悪い気はしない。豚もおだてりゃなんとやらだ。

「いやいや、レシピ見ても作れないって! 紗理奈は料理上手だよ」

「ありがとう。褒められると調子に乗るから」

「じゃあ、たくさん褒めて、調子に乗らせてから、オレの分の弁当を作ってもらおうかな?」

「そこまでチョロくありません!」

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