人生終了のお知らせが届きました

もしかして、これはデートでしょうか?

「おーい、出かけるぞ」

日曜日の昼過ぎ、チャリチャリと鍵を回す音がする。
昨晩、孝弘は紗理奈と顔を合わせるなり「明日、買い物に行くぞ。紗理奈は、荷物持ちな」と言い出したからだ。
 久しぶりに孝弘と過ごす時間に、紗理奈は楽しみで仕方ない。

「はーい、お待たせしました」

玄関ホールに佇む孝弘は、白い丸首のカットソーにダークグレーのパンツ。普段、上げている髪も下ろし雰囲気も柔らかく、黒縁メガネも遊び心がある。その姿は体躯のバランスの良さも相まって、ファッション雑誌のモデルのよう。
それに比べて、紗理奈はボーダー柄のTシャツ、デニムのロングスカートに薄手のパーカー。普段からの節約生活でロクな服を持っていないのだ。

(なんだか、野暮ったい)

出だしから(つまづ)いた気がして、紗理奈はガックリとうなだれる。
 せめて、靴ぐらい可愛いのにしようと、オープントゥのサンダルをシューズボックスから取り出した。すると、孝弘が渋い顔をする。
 
「買い物なんだから、歩きやすい靴にしろよ」

「……うん」
 
 せっかく可愛いサンダルを履こうと思ったのに……と不満に思いつつも、素直にスニーカーに履き替えた。

「ところで、どこに行くの?」

「みなとみらいでいいよな?」

 孝弘が”買い物につきあえ”と言って来たのだ。お目当ての商品を売っている所に行くのが正解のはず。それなのに、孝弘に行き先を訊ねられ、紗理奈は首をかしげた。

「どこでもいいよ。タカ兄に行きたい所に付き合うから」

「じゃ、みなとみらいで決定な」
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