人生終了のお知らせが届きました
 ただ今、運転手付きの高級セダンに乗車中。
 こんな高級車に乗るのは紗理奈にとって初めての経験だ。とは言っても、これがデートならともかく、今はそんなに良いもんじゃない。
後部座席の真ん中に座らされ、両手に花ならぬ、両脇を黒スーツのお兄サンに挟まれていた。
そう、事務所へドナドナされているのだ。

こわーいお兄サンにサンドイッチされた状態で、紗理奈の心の中は穏やかではない。

(借金を押し付け逃げた内藤真帆め、許すまじ!)

膝の上でグッと拳を握り、怒りを飲み込む。
もしも、この場で真帆を捕まえられたなら、思いつく限りの罵詈雑言を浴びせるだろう。

お互い不幸な家庭環境で育った紗理奈と真帆は、高校卒業まで、児童養護施設で過ごした仲間だ。
同い年だったせいか、いつも一緒に行動していた。いや、真帆にまとわりつかれていたと言うのが正解なのかも知れない。
 そして、真帆は何かにつけて「わたし達、親友だよね」と言っては、紗理奈に面倒事を押しつけて来るのだ。

学生の頃は、掃除当番を交代させたり、宿題を押しつけられたり、真帆が好きだと言う男子との橋渡しまで、面倒事のオンパレードだ。
高校卒業とともに児童養護施設を出て、一人暮らしを始めてからも、突然現れては夕飯をたかり、彼氏とケンカしたと言っては紗理奈のアパートに泊まりに来ていた。

その挙げ句、真帆はDV彼氏との同棲を解消したいから、アパートの保証人になってと泣きついたのだ。
 お得意の「わたし達、親友だよね」と押し切られたのが運の尽き。
アパートの保証人の用紙にサインをする際、やたらと話し掛けて来たのには裏があった。
 気を逸らし、巧妙にアパートの保証人の用紙に、サラ金のからの借用書の用紙を紛れ込ませ、いつの間にか借金の連帯保証人にさせられていたのだ。
そう、アパートの保証人とは真っ赤なウソで、借用書の保証人欄にサインをさせるのが目的だった。

 親に頼れない痛みを抱えた者同士、助け合って行けたらと、情けを掛けたのが間違い。まんまとハメられ、300万円もの借金を押しつけられてしまったのだ。

(くっ、一生の不覚。 マジ、許さん!)
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