人生終了のお知らせが届きました
 滑らかに走り出した車は、初夏の爽やかな風を切る。街路樹の若芽が日に照らされ、キラキラと輝いて見えた。
 少し窓を開ければ、頬を撫でる風を感じられる。

「気持ちいい天気だね」

「ああ、買い物日和だ」

 箱根駅伝でも有名な国道1号線に出ると景色が一変する。頭の上を走る首都高速道路、両サイドには背の高いビルに囲まれる。帷子川を渡り、ウインカーを点滅させ、とちのき通りに入れば、みなとみらい地区だ。
 ラウンドマークタワーの地下駐車場に車を停めた。
 
「さあ、どこから行くかな?」

 ショッピングモールへと続く通路で、そんな事を言いながら孝弘は伸びをする。
孝弘の買い物に付き合う(イコール)荷物持ちのつもりで来た紗理奈は、横に居る孝弘を見上げた。

「タカ兄のプランは?」

「そうだな、いろいろ見たいな」

「荷物持ち頑張るよ」

紗理奈は、ここぞとばかりに気合の入った返事をする。

「あははっ、じゃあ、まずは遊園地から行こうか」

「えっ?」

 確かにラウンドマークタワーのすぐ横は、コスモワールドと言う遊園地がある。でも、落ち着いた雰囲気の孝弘のイメージと、遊園地はかけ離れているような気がして、紗理奈は驚きで目を丸くした。
 けれど、当の孝弘はどこ吹く風で、紗理奈へ大きな手を差し出す。

「遊園地なんて、久しぶりだ」

「うん」

 おずおずと手を重ねた瞬間、大きく温かな手に包まれ、紗理奈の気持ちはソワソワと落ち着かなくなる。
 そっと、孝弘の横顔を見上げると、紗理奈の視線に気づいた孝弘がフッと微笑む。

「楽しみだな」

 コスモワールドへ続く道に出る。スーパープラネットから「キャー」と、歓声と悲鳴が混ざった黄色いが聞こえて来る。
 ワクワクと期待感が高まり、笑みがこぼれた。

「うん」

「よし、今日は遊び倒すぞ」

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