人生終了のお知らせが届きました
 ゴンドラが頂点まで上り詰めた。まわりにさえぎる物は何もなく、まるで青空にぷかりと浮かんでいるよう。
ふたりきりの空間。紗理奈は、ピッタリと寄り添うように座る孝弘との、近すぎる距離は、兄妹と言うより恋人の距離だ。
 そう意識してしまうと、無言の時間がソワソワ落ち着かない。
 紗理奈は、焦ってしゃべりだす。

「この観覧車ずっと乗ってみたかったの」

「ん、遊園地(こうゆう所)に来るのも、たまにはいいな」

「子供の頃、学校の友達が、休日に家族でみなとみらいの観覧車に乗った話をしていて、すごく羨ましかった。それで、いつか私も観覧車に乗りたいって思っていたんだけど、大人になっても贅沢なような気がして乗れなかったの」

 孝弘は、ゴンドラの外に広がる横浜港の景色へ視線を移した。

「家庭環境って、子供のうちはどんなに努力してもどうしようもならないよな。そのうち、色々とあきらめる事に慣れて、自分自身を他人事のように冷めた目で俯瞰して見るようになるんだ」

「……そうかも」

「親が居れば、当たり前に享受出来る事ってあるだろ。家族から与えられる愛情や、躾の中で知る常識……それに、生活していく上での衣食住。親が居ないとなると、それらを手に入れるのに自分で努力して学ばなければならなかったり、ずっと欠けたままだったり、苦労が多いよな」

思い当たる言葉に、紗理奈はコクリとうなづいた。
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