人生終了のお知らせが届きました

気分はジェットスター

「じゃあ、次は買い物だな」

「そうだね。荷物持ち頑張る」

 観覧車を降りたふたりは、遊園地からショッピングモールへ場所を移した。
季節の服が飾られたショーウインドウは、どれもこれも華やいで見える。
 紗理奈はいつもなら、店頭に並んだ華やかな服を眺めてはため息をつくだけのウィンドウショッピング専門だった。

(それが、ナゼこんなことに……今日は、タカ兄の買い物の荷物持ちだったはず……。)

 紗理奈は、鏡の中にいる自分の姿を見て首を傾げる。
 なぜなら、誰もが知っているようなハイブランドの服を着せられ、店員さんからは「お似合いですよ」と笑顔を向けられているのだ。
 
「おっ、なかなか良いな。次はコレ着てみろ」

 試着室から出て来た紗理奈へ新しい服が渡される。
 反射的に受け取った服は、大人っぽいAラインのワンピース。それも紗理奈のひと月分のお給料では到底手の出ない金額の代物だ。

「タカ兄……」 

”こんな高い服は買えないよ”なんて、口に出したら店員さんの手前、孝弘に恥をかかせてしまう。紗理奈は不安気に孝弘を見つめた。

「いいから着て見ろよ」

残念ながらヘルプを求めるたはずの目力が足りなかったのか、孝弘はお構い無しに試着を勧める。

「うん……」

渋々と紗理奈は試着室に入り、ワンピースに袖を通した。
白地に黒の花柄は、大人っぽいのに可愛いデザインで、紗理奈が想像していたより似合っている。
特に身体のラインが綺麗に見えて、自分の姿を鏡で何度も確認してしまう。

(わー、素敵。自分じゃないみたい)

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