人生終了のお知らせが届きました
 建物の中央が吹き抜けになっているショッピングモールは、向かい側の通路にあるお店も良く見え、混雑を感じさせない広々とした作りだ。

 会計を終えた紗理奈は、孝弘の後を追い店の外に出ると、キョロキョロと辺りを見回した。
 すると、向かい側にあるエスカレーターホールの柱の横に佇む、孝弘の背中を見つけ、紗理奈はゆっくりと足を進め近づいた。
 そして、後ろから声をかけようとした瞬間、孝弘が女性と話しているのに気が付く。
 
「……に居るらしいですよ」

「迷惑かけて悪かったな」

「どういたしまして。それよりも先生、約束守ってくださいね。わたし、水曜日がいいなぁ」

「ああ、19時でいいか?」

「ふふっ、絶対ですよ。じゃあ、水曜日19時に駅前で待ってます」
 
 孝弘の背中越しに、長い髪を綺麗に巻いた大人の女性が遠ざかって行くのが紗理奈の瞳に映る。

(タカ兄が女の人とデートの約束をしてた。やっぱり、タカ兄みたいな大人の男の人には、綺麗な女の人が似合っている……)

 女性の姿が人ごみに紛れ見えなくなっても、その残像が心に焼き付いて離れない。さっきまで弾んでいた紗理奈の気持ちは石を飲み込んだように重くなった。
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