人生終了のお知らせが届きました

　孝弘は辺りを見回した。そして、少し離れた場所に居る紗理奈に気づき、何事も無かったような顔を向ける。

「なんだ、来ていたなら声ぐらいかけろよ」

「う、うん。パジャマ買ってきたよ」

　取り繕って言ってみたものの、紗理奈は自分の顔が引きつっているような気がした。

「今日からそのパジャマ着て寝るんだろう？」
　
「うん……あのさ、さっき、女の人と話ししてたよね。見えちゃった」

　孝弘のプライベートに口出しするべきで無いとわかっているのに、紗理奈は心の中がざわざわして、言わずにはいられなかった。
　もしも、あの女の人が恋人だとしたら、これから先、孝弘の家で暮らす事など出来ないはずだ。

（タカ兄の返事を聞くのがこわい）

　肩に力を入れて、そっと孝弘の様子を窺った。すると、孝弘は事も無げに言う。

「ああ、仕事で付き合いのある女性(ひと)で、偶然会ったから挨拶しただけだ」

「綺麗な人だったね」

　褒め言葉なのに、皮肉めいた響きを含んでしまう。これは、明らかに嫉妬だ。
　
「そうか？　まあ、自分自身に磨きをかけているだろうから、傍目には綺麗なんだろうな」

「えっ？」

　デートの約束をしていたはずなのに、孝弘の気の無い様子に紗理奈は、驚きを隠せない。
　そんな紗理奈を見て、孝弘はフッと笑う。

「仕事で付き合いがある人だって言っただろ。紗理奈が気にするような関係じゃない」

「う、うん」

　これ以上踏み込むなと、言われた気がして何も言えなくなる紗理奈だった。