人生終了のお知らせが届きました

只今、捜索中

 横浜駅で、紗理奈と満は東海道線の上り電車に乗り込んだ。
 僅か8分の距離だが、紗理奈が川崎駅に降り立つのは、この日初めてだった。
 整備された街並みは、紗理奈が想像していたより、ずっと開けていて、どの方向に進んで良いのかもわからず、完全におのぼりさん状態だ。
 対照的に、営業で歩き慣れている満は、スマホに『Club N』と入力して、お店のホームページを開き、道順や営業時間をチェックする。

「なあ、真帆の働いて居るお店に行くんだろ? お店が終る時間の方が会えるかも」

「……ごめんね。考え無しに来ちゃって、お店の場所だけ確認したら、別の日に来るよ」

 もしも、内藤真帆から300万円を返してもらえるなら……。
 借金が無くなり、孝弘とは貸し借り無しの対等な関係になれる。そう思うと紗理奈は気が急でしまったのだ。
 今になって、右も左もわからない知らない土地に来て、満に迷惑を掛けてしまっていると後悔していた。
 
「そうだな。明るい時間ならともかく、暗くなってから女の子の一人歩きはダメだ」

 何気ない素振りで客引きやスカウトが、道すがら佇んでいて安全とは言い切れない。
 現に紗理奈の横に満が居るから、スカウトは遠巻きに見ているだけだが、これが紗理奈ひとりだったら格好のターゲットだ。
 無茶しかねない紗理奈の性格をわかっている満は不安に駆られる。

「なあ、そんなに必死になって返してもらわないといけない物って何? ちょっとした物なら、オレがプレゼントするからあきらめたら?」
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