人生終了のお知らせが届きました
 静かに涙を流す紗理奈の肩を孝弘がそっと抱き寄せた。
 その様子を見た満は、気持ちが落ち着かない。

「孝弘さんが、どうしてココに居るんでしょうか? 真帆は何をしたんですか?」

 児童養護施設で一緒だったとはいえ、孝弘は10年も前に退所していた。紗理奈と過ごした日々は、満の方がずっと長く、満は満なりに紗理奈を守って来たと自負している。
 それなのに、孝弘に何もかも奪われたようで、納得がいかなかった。

「それは……紗理奈のためだとだけ、言っておく。弁護士には、守秘義務があるんだよ」

「弁護士?」

 訝しげに眉をひそめる満に、孝弘がうなづいた。胸には弁護士の象徴であるバッチがある。

「私、真帆に騙されて、多額の借金を押し付けられたの。それで、取り立てにあって、もう少しでフーゾクに行く所を助けてくれたのが、タカ兄だったの」

「借金……」

 紗理奈が必死になって真帆の行方を捜していた理由が、やっと腑に落ちる満だった。そして、紗理奈の手が、縋るように孝弘の服の端をギュッと掴んでいる事に気づいてしまった。
 紗理奈に何も聞かされていなかった自分と、頼られていた孝弘とでは、同じ土俵にすら上がれていなかったのだ。
 満は諦めたように深く息を吐き出した。

「紗理奈が、あぶない目に合わないんだったらそれでいい」

「心配はいらない。これからも紗理奈の事は、俺が守る」



   

 
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