人生終了のお知らせが届きました
「高橋サン、さあ、返済計画のお話をしましょうか」

 黒革ソファーに座らされた紗理奈の横に、ドカッとお兄サンが乱暴に腰を下ろした。ローテーブルを挟んで向かいに座ったもうひとりのお兄サンは、口角を上げ薄く笑う。
 
「アンタ、女で良かったよな。女の武器を使えば、あっという間に返済完了だ」

 と、言われても、「うん」と頷けるわけがない。
 なにせ、紗理奈の見た目は、伸ばしっぱなしの髪をゴムでまとめただけのヘアスタイル、おまけに黒縁のメガネの陰キャ。男の子と付き合った事も無ければ、キスもした事がない立派な処女なのだ。
 女の武器などと言われても、知識も経験もなさすぎる。ましてや、知らない男の人と、あれやこれやスルなんて絶対にムリ!
 それに今の時代、直ぐにSNSに晒されて、一生消えないデジタルタトゥーになる。
断固お断りだ。
 
「土日にアルバイトをしてお支払いしますので、月に5万円ずつのローンにしてください。お願いします」

「ざけんなっ!」

ダーンッと派手な音を立て、向かいの席のお兄サンが、ローテーブルを蹴り上げた。

「キャッ」

短い悲鳴をあげ肩をすくめた紗理奈の心臓は、キュッと縮み上がる。

向かいの席のお兄サンが、ニヤニヤと口元を歪ませながら話しを続けた。

「高橋サン、借金すると利息が付くってくらいの知識は、あるんでしょう? ウチは複利で、借りた金を返さないでいると利息にも利息が付くんだよ。グズグズしてると一生返済だ。せっかく短期で返せる手段があるんだから、さっさと返せばいいんだよ」
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