はっきよい! ショコラちゃん~la mignonne petite fille~
「はぐれないようにみんないっしょに行動するべきなんだけど、秀平さんといっしょなら問題ないか。あとで銀の鈴の所で待ち合わせしましょう」
利乃が許可を出すと、二人はすぐさま目的地へと逃げるように早歩きで向かっていった。銀の鈴とは、東京駅で最も有名な待ち合わせスポットだ。
「じゃあ、俺も、そっちにしようかな」
梶之助もこの二人に付き合おうと後を追う。
「ダーメ! 梶之助くんは私達と付き合って」
ところが千代古齢糖にすぐに追いつかれ、腕をぐいっと引っ張られ阻止された。
「いてててぇっ。でっ、でもさぁ。女の子は女の子同士で食事した方が楽しいかと……」
「ワタシ、東京で女の子だけで動くのは危険だと思うの」
「わたしも秋穂さんと同じ意見です。安全のため、梶之助さんもご同行お願いします」
秋穂と利乃からも強く頼まれる。
「俺がいても変わらないでしょ」
「いやいやー、頼りにしてるよ、梶之助くん。防犯対策には全く役に立たないだろうけど、道案内と荷物持ちで」
「……」
千代古齢糖に笑顔でこう言われ、梶之助はほんの少しだけイラッとしまった。
こうしてこの四人は千代古齢糖の希望した洋食レストランへ。
「四名様ですね。こちらへどうぞ」
店内に入ると、ウェイトレスに四人掛けテーブル席へと案内された。千代古齢糖と利乃、秋穂と梶之助が向かい合うような形に座ると、千代古齢糖がメニュー表を手に取る。
「私、グリーンカレーにする!」
「千代古齢糖ちゃん、やっぱりそれか。俺は、天ざる蕎麦で」
「梶之助さん、渋いですね。わたしも渋めにかき揚げうどんにしよう。出汁が真っ黒で関東風だから、関西との文化の違いを感じるわ」
三人はすんなりとメニューを決めた。
「……」
まだ迷っていた秋穂に、
「秋穂さんはどれにする? いっぱいあり過ぎて迷っちゃうよね? じっくり決めていいわよ」
利乃は優しく話しかける。
「あっ、あのね、ワタシ……お子様、ランチが、食べたいなぁって思って」
秋穂は顔をやや下に向けて、照れくさそうに小声でポツリと呟いた。
「秋穂ちゃん、今でもお子様ランチ食べたがるなんてかっわいい!」
「秋穂さん、幼稚園児みたい」
千代古齢糖と利乃はにっこり微笑みかける。
「目当てはおまけなんだけど、さすがに高校生ともなると、恥ずかしいから、やっぱりトルコライスにする」
秋穂はさらに照れくさくなったのか、希望を変更。
「秋穂ちゃん、本当は食べたいんでしょ? 食べないときっと後悔するよ。ここでは年齢制限ないみたいだし」
「俺も、気兼ねすることなく食べた方がいいと思う」
千代古齢糖と梶之助がこうアドバイスすると、
「じゃあワタシ、これに決めた!」
秋穂は顔をクイッと上げて、意志を固めた。
「私が注文するね」
千代古齢糖は呼びボタンを押し、ウェイトレスに注文する。
それから五分ほどして、
「お待たせしました。お子様ランチでございます。はい、お嬢ちゃん。ではごゆっくりどうぞ」
秋穂の分が最初にご到着。パンダさんの形をしたお皿に日本の国旗の立ったチャーハン、プリン、タルタルソースのたっぷりかかったエビフライ、ハンバーグステーキなど定番のもの。その他お惣菜がバリエーション豊富に盛られ、おまけには可愛らしいパンダさんのストラップが付いて来た。
「……私のじゃ、ないんだけど」
千代古齢糖の前に置かれてしまった。千代古齢糖は軽く苦笑いする。
「あらあらっ、千代古齢糖さんが頼んだように思われちゃったのね」
利乃はくすくす笑う。
「ショコラちゃん、若手に見られてるってことだから、気にしちゃダメだよ」
秋穂は少し申し訳なさそうに、お子様ランチを自分の手前に引っ張った。
(ウェイトレス、普通はそう思うよな)
梶之助は笑いを堪えていた。
「……確かに私、小学生に見えるよね」
千代古齢糖は内心ちょっぴり落ち込んでしまったようだ。
さらに一分ほど後、他の三人の分も続々運ばれてくる。
こうして四人のランチタイムが始まった。
「エビフライは、ワタシの大好物なの」
秋穂はしっぽの部分を手でつかんで持ち、豪快にパクリとかじりつく。
「美味しいーっ!」
その瞬間、とっても幸せそうな表情へと変わった。
「モグモグ食べてる秋穂ちゃんって、なんかキンカンの葉っぱを食べてるアオムシさんみたいですごくかわいいね」
「秋穂さん、あんまり一気に入れすぎたら喉に詰まらせちゃうかもしれないよ」
千代古齢糖と利乃はその様子を微笑ましく眺める。
「秋穂ちゃん、食べさせてあげるよ。はい、あーんして」
千代古齢糖はお子様ランチにもう一匹あったエビフライをフォークで突き刺し、秋穂の口元へ近づけた。
「ありがとう、ショコラちゃん。でも、食べさせてもらうのはちょっと恥ずかしいな」
秋穂はそう言いつつも、結局食べさせてもらった。
「梶之助くん、育ち盛りなんだし天ざる蕎麦だけじゃ足りないでしょう? 私のも分けてあげるよ。はい、あーん」
千代古齢糖は、今度はグリーンカレーの中にあったチキンの一片をフォークで突き刺し、梶之助の口元へ近づけた。
「いや、いいよ」
梶之助は右手で箸を持ち、麺を啜ったまま左手を振りかざして拒否する。
「梶之助さん、顔が赤くなっていませんけど、心の中では照れてますね」
「梶之助くん、そんなに小食じゃこれ以上背が伸びないし体重も増えないよ」
利乃と千代古齢糖はにこっと笑いながらそんな彼を見つめた。
昼食を取り終え、レストランから出た四人は待ち合わせ場所の銀の鈴広場へ。
「まだ光ちゃんと秀ちゃん、食べ終わってないみたいだね。あの、私、おトイレ行って来る」
千代古齢糖は少しもじもじしながら伝える。
「ワタシも行きたいと思ってたところだよ」
「わたしもー。漏れそうです」
秋穂と利乃も同調した。
「じゃあ荷物、持っててあげるよ」
梶之助は気遣う。
「ありがとうカジノスケくん。頼りになるね」
「申し訳ないです梶之助さん、なるべく早く戻って来るので」
「サーンキュ、梶之助くん、さっそく役に立ってくれたね」
こうして三人は荷物を梶之助に預け、最寄りの女子トイレの方へ向かっていった。
梶之助は三人から受け取ったリュックサックを自分の側に固め、近くの長椅子に腰掛ける。
(早く、戻ってこないかなぁ。人多過ぎて落ち着かないよ)
待っている間、そわそわしていた。
見知らぬ土地なので、緊張感がかなり高まっていたのだ。
多くの人々がひっきりなしに彼の目の前を通り過ぎていく。
「梶之助殿ぉー。ラーメンすこぶる美味かったぜ」
「どうもー」
タイミング良く、光洋と秀平が戻って来てくれた。
「光洋、満足げな表情だな」
梶之助は一安心する。
「大迎君は三種類、つまり三人分も食べていましたよん」
秀平は笑顔で報告。
「光洋、食べ過ぎだろ」
「おいらにとっては、まだ腹六分目といったところだぜ」
呆れる梶之助に、光洋はにっこり笑いながら言う。
そんな時、
「お待たせーっ、梶之助くん。光ちゃんと秀ちゃんも来たんだね」
「お待たせしました」
「コウちゃんとシュウちゃん、ちゃんと来てくれて良かった」
女の子三人も戻って来た。
利乃が許可を出すと、二人はすぐさま目的地へと逃げるように早歩きで向かっていった。銀の鈴とは、東京駅で最も有名な待ち合わせスポットだ。
「じゃあ、俺も、そっちにしようかな」
梶之助もこの二人に付き合おうと後を追う。
「ダーメ! 梶之助くんは私達と付き合って」
ところが千代古齢糖にすぐに追いつかれ、腕をぐいっと引っ張られ阻止された。
「いてててぇっ。でっ、でもさぁ。女の子は女の子同士で食事した方が楽しいかと……」
「ワタシ、東京で女の子だけで動くのは危険だと思うの」
「わたしも秋穂さんと同じ意見です。安全のため、梶之助さんもご同行お願いします」
秋穂と利乃からも強く頼まれる。
「俺がいても変わらないでしょ」
「いやいやー、頼りにしてるよ、梶之助くん。防犯対策には全く役に立たないだろうけど、道案内と荷物持ちで」
「……」
千代古齢糖に笑顔でこう言われ、梶之助はほんの少しだけイラッとしまった。
こうしてこの四人は千代古齢糖の希望した洋食レストランへ。
「四名様ですね。こちらへどうぞ」
店内に入ると、ウェイトレスに四人掛けテーブル席へと案内された。千代古齢糖と利乃、秋穂と梶之助が向かい合うような形に座ると、千代古齢糖がメニュー表を手に取る。
「私、グリーンカレーにする!」
「千代古齢糖ちゃん、やっぱりそれか。俺は、天ざる蕎麦で」
「梶之助さん、渋いですね。わたしも渋めにかき揚げうどんにしよう。出汁が真っ黒で関東風だから、関西との文化の違いを感じるわ」
三人はすんなりとメニューを決めた。
「……」
まだ迷っていた秋穂に、
「秋穂さんはどれにする? いっぱいあり過ぎて迷っちゃうよね? じっくり決めていいわよ」
利乃は優しく話しかける。
「あっ、あのね、ワタシ……お子様、ランチが、食べたいなぁって思って」
秋穂は顔をやや下に向けて、照れくさそうに小声でポツリと呟いた。
「秋穂ちゃん、今でもお子様ランチ食べたがるなんてかっわいい!」
「秋穂さん、幼稚園児みたい」
千代古齢糖と利乃はにっこり微笑みかける。
「目当てはおまけなんだけど、さすがに高校生ともなると、恥ずかしいから、やっぱりトルコライスにする」
秋穂はさらに照れくさくなったのか、希望を変更。
「秋穂ちゃん、本当は食べたいんでしょ? 食べないときっと後悔するよ。ここでは年齢制限ないみたいだし」
「俺も、気兼ねすることなく食べた方がいいと思う」
千代古齢糖と梶之助がこうアドバイスすると、
「じゃあワタシ、これに決めた!」
秋穂は顔をクイッと上げて、意志を固めた。
「私が注文するね」
千代古齢糖は呼びボタンを押し、ウェイトレスに注文する。
それから五分ほどして、
「お待たせしました。お子様ランチでございます。はい、お嬢ちゃん。ではごゆっくりどうぞ」
秋穂の分が最初にご到着。パンダさんの形をしたお皿に日本の国旗の立ったチャーハン、プリン、タルタルソースのたっぷりかかったエビフライ、ハンバーグステーキなど定番のもの。その他お惣菜がバリエーション豊富に盛られ、おまけには可愛らしいパンダさんのストラップが付いて来た。
「……私のじゃ、ないんだけど」
千代古齢糖の前に置かれてしまった。千代古齢糖は軽く苦笑いする。
「あらあらっ、千代古齢糖さんが頼んだように思われちゃったのね」
利乃はくすくす笑う。
「ショコラちゃん、若手に見られてるってことだから、気にしちゃダメだよ」
秋穂は少し申し訳なさそうに、お子様ランチを自分の手前に引っ張った。
(ウェイトレス、普通はそう思うよな)
梶之助は笑いを堪えていた。
「……確かに私、小学生に見えるよね」
千代古齢糖は内心ちょっぴり落ち込んでしまったようだ。
さらに一分ほど後、他の三人の分も続々運ばれてくる。
こうして四人のランチタイムが始まった。
「エビフライは、ワタシの大好物なの」
秋穂はしっぽの部分を手でつかんで持ち、豪快にパクリとかじりつく。
「美味しいーっ!」
その瞬間、とっても幸せそうな表情へと変わった。
「モグモグ食べてる秋穂ちゃんって、なんかキンカンの葉っぱを食べてるアオムシさんみたいですごくかわいいね」
「秋穂さん、あんまり一気に入れすぎたら喉に詰まらせちゃうかもしれないよ」
千代古齢糖と利乃はその様子を微笑ましく眺める。
「秋穂ちゃん、食べさせてあげるよ。はい、あーんして」
千代古齢糖はお子様ランチにもう一匹あったエビフライをフォークで突き刺し、秋穂の口元へ近づけた。
「ありがとう、ショコラちゃん。でも、食べさせてもらうのはちょっと恥ずかしいな」
秋穂はそう言いつつも、結局食べさせてもらった。
「梶之助くん、育ち盛りなんだし天ざる蕎麦だけじゃ足りないでしょう? 私のも分けてあげるよ。はい、あーん」
千代古齢糖は、今度はグリーンカレーの中にあったチキンの一片をフォークで突き刺し、梶之助の口元へ近づけた。
「いや、いいよ」
梶之助は右手で箸を持ち、麺を啜ったまま左手を振りかざして拒否する。
「梶之助さん、顔が赤くなっていませんけど、心の中では照れてますね」
「梶之助くん、そんなに小食じゃこれ以上背が伸びないし体重も増えないよ」
利乃と千代古齢糖はにこっと笑いながらそんな彼を見つめた。
昼食を取り終え、レストランから出た四人は待ち合わせ場所の銀の鈴広場へ。
「まだ光ちゃんと秀ちゃん、食べ終わってないみたいだね。あの、私、おトイレ行って来る」
千代古齢糖は少しもじもじしながら伝える。
「ワタシも行きたいと思ってたところだよ」
「わたしもー。漏れそうです」
秋穂と利乃も同調した。
「じゃあ荷物、持っててあげるよ」
梶之助は気遣う。
「ありがとうカジノスケくん。頼りになるね」
「申し訳ないです梶之助さん、なるべく早く戻って来るので」
「サーンキュ、梶之助くん、さっそく役に立ってくれたね」
こうして三人は荷物を梶之助に預け、最寄りの女子トイレの方へ向かっていった。
梶之助は三人から受け取ったリュックサックを自分の側に固め、近くの長椅子に腰掛ける。
(早く、戻ってこないかなぁ。人多過ぎて落ち着かないよ)
待っている間、そわそわしていた。
見知らぬ土地なので、緊張感がかなり高まっていたのだ。
多くの人々がひっきりなしに彼の目の前を通り過ぎていく。
「梶之助殿ぉー。ラーメンすこぶる美味かったぜ」
「どうもー」
タイミング良く、光洋と秀平が戻って来てくれた。
「光洋、満足げな表情だな」
梶之助は一安心する。
「大迎君は三種類、つまり三人分も食べていましたよん」
秀平は笑顔で報告。
「光洋、食べ過ぎだろ」
「おいらにとっては、まだ腹六分目といったところだぜ」
呆れる梶之助に、光洋はにっこり笑いながら言う。
そんな時、
「お待たせーっ、梶之助くん。光ちゃんと秀ちゃんも来たんだね」
「お待たせしました」
「コウちゃんとシュウちゃん、ちゃんと来てくれて良かった」
女の子三人も戻って来た。