はっきよい! ショコラちゃん~la mignonne petite fille~
秋穂と千代古齢糖は利乃の忠告をきちんと守り、どうしても欲しいグッズを一つだけ選んで会計を済ませる。
「それにしても光洋さんと秀平さん、今度は梶之助さんも、また勝手に動いちゃって」
利乃はため息混じりに呟いた。
「お店が広過ぎて、コウちゃん達どこへ行ったのか分からないよ」
秋穂は周囲をぐるりと見渡してみる。
「たぶんまだお店の中にいるよ。一階の出入口で待っておこう!」
千代古齢糖はそう告げて、エレベーター横の《→》ボタンを押した。
しばらく待ち扉が開かれると、
「あっ!」
中にいた一人が思わず呟く。
梶之助だった。当然のように他に光洋と秀平もいた。
「やっほー、カジノスケくん達」
「おう、なんという偶然!」
「噂をすれば影が立つ、のことわざ通りですね」
女の子三人も思わず声を漏らした。そして乗り込む。
「「……」」
光洋と秀平は緊張からか、黙ったままだった。
こうして一同は一階へと下り店から出、中央通りをさらに北へ向かって歩いていく。
「ねえっ、アキバはしょっちゅうテレビで特集されてるのに、ポンバシはほとんど注目されないのは寂しいよね?」
信号待ちをしている際、千代古齢糖は光洋に話しかけてみた。
「うっ、うん。まあ、二番目ってのは、注目されないからな」
光洋は俯き加減で緊張気味に意見する。
「日本で二番目に高い山とか、広い湖とか訊かれて、即答出来る人は少ないと思う」
「……言われてみれば、確かに。大相撲でも歴代二位の記録の人はあまり目立たないし」
梶之助のツッコミに、千代古齢糖はハッと気付かされた。
「鬼柳君の質問の答は北岳と霞ヶ浦だけど、定めし知名度は落ちますね。京大も東大に比べれば注目されませんしぃ。オリンピックの銀メダリストも同じですね。二番目の方が有名なものといえば、鳥取砂丘とエアーズロックくらいかなぁ」
秀平の呟きに、
「鳥取砂丘とエアーズロックって二番目だったの?」
千代古齢糖は少し驚く。
「イェス。砂丘の広さ日本一は、青森県にある猿ヶ森砂丘だけど、防衛省の弾道試験場になってて民間人は立ち入り禁止ゆえに、知名度が低いようです。岩の大きさ世界一も、マウント・オーガスタスだし」
「へー、私初めて知ったよ」
「秀平殿、相当物知りなのだな」
光洋も感心していた。
「シュウちゃん、小学校の頃のあだ名、『博士』だったもんね」
「……」
秋穂ににこっと微笑みかけられた秀平は、照れてしまう。
「秀平さんの雑学の豊富さには、わたしも適わないわ」
利乃は尊敬の念を抱いているようだった。
「ねえねえ、光ちゃんと秀ちゃんは、メイド喫茶にもよく行ってるんでしょ?」
千代古齢糖がこう問いかけると、光洋と秀平は手をぶんぶん振りかざし、ノーの合図を取った。
「メイド喫茶のメイドは、三次元なんだぜ」
「そんな不健全な空間に、ボク達が立ち寄るわけがないじゃないですか」
続けて苦い表情を浮かべながらこう主張する。
「そうなんだ。楽しそうなんだけどな。このあとどこ行く? 渋谷と原宿はどう? ハチ公とモヤイ像見て、毎年お正月に横綱の土俵入りしてる明治神宮参拝して、竹下通りを歩かない?」
千代古齢糖の誘いを、
「一番あり得ないぜ」
「リア充の溜り場じゃないですかぁー」
光洋と秀平は困惑顔で即、拒否した。
「ワタシも、渋谷原宿はちょっと、家族旅行で行った時、人が多過ぎて落ち着かなかったから。ワタシは、池袋のサンシャイン水族館に行きたいな。リニューアルしてからは、まだ行ってないから」
「いいねえ、池袋といえばナン○ャタウンも面白そうだよ」
秋穂の希望に、千代古齢糖は大賛成。
「あの、わたし、どうしても行きたい所があるのっ!」
利乃は強く言った。
結局、他のみんなも快く利乃の希望に賛同し、全会一致で池袋は止めてそこへ向かうことにした。
一同は末広町駅から地下鉄を乗り継ぎ、本郷三丁目駅へ。
構内を出ると、本郷通りを北へ向かって歩いていく。
目的地へ辿り着くと、
「めっちゃ格好いいね。さすが日本の大学の東の横綱なだけはあるね」
千代古齢糖はスマホで門を撮影しながら興奮気味に呟いた。
一同が訪れたのは、かの〝東大赤門〟だ。
「リノちゃん、ここを目指してるんだね。やっぱすごいね。ワタシには絶対無理だよ」
秋穂は尊敬の眼差しを向けた。
「いや、わたし、京大第一志望だから。でも、東大は一度見ておきたかったの」
利乃は嬉しそうに言う。
「利乃ちゃん、秀ちゃんと同じく西の横綱狙いかぁ。東大も京大も私には絶対入れないよ」
「俺も百パー無理だな。父さんは東大の中でも理Ⅲは別格の難しさだって言ってたけど、秀平なら、あの理Ⅲにも受かるんじゃないか?」
「いやいや鬼柳君、ボクなんかには絶対無理だよーん。日本の大学受験において、東大理Ⅲに次ぐ難易度と謳われる京大医学部医学科もね」
梶之助の質問に、秀平は謙遜気味に答える。
「秀平殿でもはっきりと無理と言い張るとは。でも、東京藝大は理Ⅲより難しいらしいな。別の意味で」
光洋の呟き。
「あそこは生まれつきの才能がなきゃ無理らしいですからね。宝塚音楽学校も同様に」
秀平はすかさず突っ込む。
「学力じゃ測れない最難関か。力士で例えるなら……雷電爲右エ門だね」
「千代古齢糖さんらしい例え方ね」
利乃は少し感心した。
「赤門前、私達の他にも観光客いっぱいだね。私達もみんなでいっしょに赤門を背景に記念撮影しようよ」
千代古齢糖の提案に、
「いいわね、撮りましょう」
「せっかく来たもんね。撮らなきゃ勿体無いよね」
利乃と秋穂は快く賛成したが、
「俺はいいよ」
「おいらも結構」
「ボクも結構ですよん。女性方だけでお撮り下さいませー」
男子三人は嫌がっていた。
「まあまあ、そう言わずに」
「しょっ、千代古齢糖ちゃん、いたたたぁ……」
梶之助は千代古齢糖に〝とったり〟のような形で腕をぐいっと引っ張られ、無理やり赤門前に並ばされる。
「梶之助殿が写るというのであれば……」
「ボクも、鬼柳君が写るのでいっしょに写りますよん」
光洋と秀平はしぶしぶ加わることにした。
利乃が近くにいた他の観光客に撮影をお願いし、無事記念撮影完了。
撮られた写真の並びは左から順に光洋、秀平、梶之助、千代古齢糖、利乃、秋穂。男子は三人とも緊張しているのか若干硬い表情であったが、女の子は三人ともとても満足そうな表情だった。
一同はこのあとさらにもう少し北へ歩き、赤茶色の煉瓦造りの外観が特徴的な安田講堂も見学する。
「ここは学業向上祈願に関しては、北野天満宮のなで牛以上の横綱級パワースポットに違いないよ。東大頭脳パワーを授からなくては」
千代古齢糖は安田講堂に向かって両手をかざし、大きく深呼吸した。
「ワタシもやるよ。これで次のマーク模試は九割超えれそう」
秋穂もつられて真似をする。
「わたしは、恥ずかしいのでやめておきます」
利乃は周りにいる東大生達が気になって、苦笑顔で呟いた。
「東大から初めて力士になった人、すごく尊敬出来るよ。東大出身力士、これからもどんどん出て欲しいね」
千代古齢糖は朗らかな気分で呟くのだった。
「それにしても光洋さんと秀平さん、今度は梶之助さんも、また勝手に動いちゃって」
利乃はため息混じりに呟いた。
「お店が広過ぎて、コウちゃん達どこへ行ったのか分からないよ」
秋穂は周囲をぐるりと見渡してみる。
「たぶんまだお店の中にいるよ。一階の出入口で待っておこう!」
千代古齢糖はそう告げて、エレベーター横の《→》ボタンを押した。
しばらく待ち扉が開かれると、
「あっ!」
中にいた一人が思わず呟く。
梶之助だった。当然のように他に光洋と秀平もいた。
「やっほー、カジノスケくん達」
「おう、なんという偶然!」
「噂をすれば影が立つ、のことわざ通りですね」
女の子三人も思わず声を漏らした。そして乗り込む。
「「……」」
光洋と秀平は緊張からか、黙ったままだった。
こうして一同は一階へと下り店から出、中央通りをさらに北へ向かって歩いていく。
「ねえっ、アキバはしょっちゅうテレビで特集されてるのに、ポンバシはほとんど注目されないのは寂しいよね?」
信号待ちをしている際、千代古齢糖は光洋に話しかけてみた。
「うっ、うん。まあ、二番目ってのは、注目されないからな」
光洋は俯き加減で緊張気味に意見する。
「日本で二番目に高い山とか、広い湖とか訊かれて、即答出来る人は少ないと思う」
「……言われてみれば、確かに。大相撲でも歴代二位の記録の人はあまり目立たないし」
梶之助のツッコミに、千代古齢糖はハッと気付かされた。
「鬼柳君の質問の答は北岳と霞ヶ浦だけど、定めし知名度は落ちますね。京大も東大に比べれば注目されませんしぃ。オリンピックの銀メダリストも同じですね。二番目の方が有名なものといえば、鳥取砂丘とエアーズロックくらいかなぁ」
秀平の呟きに、
「鳥取砂丘とエアーズロックって二番目だったの?」
千代古齢糖は少し驚く。
「イェス。砂丘の広さ日本一は、青森県にある猿ヶ森砂丘だけど、防衛省の弾道試験場になってて民間人は立ち入り禁止ゆえに、知名度が低いようです。岩の大きさ世界一も、マウント・オーガスタスだし」
「へー、私初めて知ったよ」
「秀平殿、相当物知りなのだな」
光洋も感心していた。
「シュウちゃん、小学校の頃のあだ名、『博士』だったもんね」
「……」
秋穂ににこっと微笑みかけられた秀平は、照れてしまう。
「秀平さんの雑学の豊富さには、わたしも適わないわ」
利乃は尊敬の念を抱いているようだった。
「ねえねえ、光ちゃんと秀ちゃんは、メイド喫茶にもよく行ってるんでしょ?」
千代古齢糖がこう問いかけると、光洋と秀平は手をぶんぶん振りかざし、ノーの合図を取った。
「メイド喫茶のメイドは、三次元なんだぜ」
「そんな不健全な空間に、ボク達が立ち寄るわけがないじゃないですか」
続けて苦い表情を浮かべながらこう主張する。
「そうなんだ。楽しそうなんだけどな。このあとどこ行く? 渋谷と原宿はどう? ハチ公とモヤイ像見て、毎年お正月に横綱の土俵入りしてる明治神宮参拝して、竹下通りを歩かない?」
千代古齢糖の誘いを、
「一番あり得ないぜ」
「リア充の溜り場じゃないですかぁー」
光洋と秀平は困惑顔で即、拒否した。
「ワタシも、渋谷原宿はちょっと、家族旅行で行った時、人が多過ぎて落ち着かなかったから。ワタシは、池袋のサンシャイン水族館に行きたいな。リニューアルしてからは、まだ行ってないから」
「いいねえ、池袋といえばナン○ャタウンも面白そうだよ」
秋穂の希望に、千代古齢糖は大賛成。
「あの、わたし、どうしても行きたい所があるのっ!」
利乃は強く言った。
結局、他のみんなも快く利乃の希望に賛同し、全会一致で池袋は止めてそこへ向かうことにした。
一同は末広町駅から地下鉄を乗り継ぎ、本郷三丁目駅へ。
構内を出ると、本郷通りを北へ向かって歩いていく。
目的地へ辿り着くと、
「めっちゃ格好いいね。さすが日本の大学の東の横綱なだけはあるね」
千代古齢糖はスマホで門を撮影しながら興奮気味に呟いた。
一同が訪れたのは、かの〝東大赤門〟だ。
「リノちゃん、ここを目指してるんだね。やっぱすごいね。ワタシには絶対無理だよ」
秋穂は尊敬の眼差しを向けた。
「いや、わたし、京大第一志望だから。でも、東大は一度見ておきたかったの」
利乃は嬉しそうに言う。
「利乃ちゃん、秀ちゃんと同じく西の横綱狙いかぁ。東大も京大も私には絶対入れないよ」
「俺も百パー無理だな。父さんは東大の中でも理Ⅲは別格の難しさだって言ってたけど、秀平なら、あの理Ⅲにも受かるんじゃないか?」
「いやいや鬼柳君、ボクなんかには絶対無理だよーん。日本の大学受験において、東大理Ⅲに次ぐ難易度と謳われる京大医学部医学科もね」
梶之助の質問に、秀平は謙遜気味に答える。
「秀平殿でもはっきりと無理と言い張るとは。でも、東京藝大は理Ⅲより難しいらしいな。別の意味で」
光洋の呟き。
「あそこは生まれつきの才能がなきゃ無理らしいですからね。宝塚音楽学校も同様に」
秀平はすかさず突っ込む。
「学力じゃ測れない最難関か。力士で例えるなら……雷電爲右エ門だね」
「千代古齢糖さんらしい例え方ね」
利乃は少し感心した。
「赤門前、私達の他にも観光客いっぱいだね。私達もみんなでいっしょに赤門を背景に記念撮影しようよ」
千代古齢糖の提案に、
「いいわね、撮りましょう」
「せっかく来たもんね。撮らなきゃ勿体無いよね」
利乃と秋穂は快く賛成したが、
「俺はいいよ」
「おいらも結構」
「ボクも結構ですよん。女性方だけでお撮り下さいませー」
男子三人は嫌がっていた。
「まあまあ、そう言わずに」
「しょっ、千代古齢糖ちゃん、いたたたぁ……」
梶之助は千代古齢糖に〝とったり〟のような形で腕をぐいっと引っ張られ、無理やり赤門前に並ばされる。
「梶之助殿が写るというのであれば……」
「ボクも、鬼柳君が写るのでいっしょに写りますよん」
光洋と秀平はしぶしぶ加わることにした。
利乃が近くにいた他の観光客に撮影をお願いし、無事記念撮影完了。
撮られた写真の並びは左から順に光洋、秀平、梶之助、千代古齢糖、利乃、秋穂。男子は三人とも緊張しているのか若干硬い表情であったが、女の子は三人ともとても満足そうな表情だった。
一同はこのあとさらにもう少し北へ歩き、赤茶色の煉瓦造りの外観が特徴的な安田講堂も見学する。
「ここは学業向上祈願に関しては、北野天満宮のなで牛以上の横綱級パワースポットに違いないよ。東大頭脳パワーを授からなくては」
千代古齢糖は安田講堂に向かって両手をかざし、大きく深呼吸した。
「ワタシもやるよ。これで次のマーク模試は九割超えれそう」
秋穂もつられて真似をする。
「わたしは、恥ずかしいのでやめておきます」
利乃は周りにいる東大生達が気になって、苦笑顔で呟いた。
「東大から初めて力士になった人、すごく尊敬出来るよ。東大出身力士、これからもどんどん出て欲しいね」
千代古齢糖は朗らかな気分で呟くのだった。