お嬢様は“いけないコト”がしたい
2
「お邪魔します・・・。」
初めて入る男の人の部屋、幸治君の部屋はオフィス街の駅から数分歩いた所にある高級マンションだった。
安く貸してくれているとはいえ、“普通”の男の人が・・・借金がある男の人が住めるとは思えない高級マンション。
聞きたいことは沢山あったけれど、それを飲み込み幸治君が暮らしている部屋へと入っていく。
「散らかっててすみません。」
ずっと引いていた私の右手を離した幸治君は私のことをソファーに座らせた後、結構散らかっているリビングをテキパキと片付けていく。
その様子をソファーに座りながら眺める。
座った感じで分かる、このソファーも高級な物。
冷房がつけられたばかりのまだまだ暑い部屋の中、部屋に入りすぐにスーツのジャケットをハンガーに掛けた幸治君。
長袖のワイシャツだけどジャケットを着ていた時よりも幸治君の身体がよく分かる。
細いけれどしっかりとついている筋肉。
約2年前、最後に会った時は高校生の時から着ていた紺色の店名が書かれたTシャツ姿。
その時に見えていた幸治君の腕までなんでか思い出し、テキパキと片付けていく幸治君の姿に重ねてしまう。
“いけないコト”をしている気分になり、この“いけないコト”には慌てて幸治君から視線を逸らした。
ソファーに座りながら目の前にある高級そうなローテーブルをしばらく眺めていたら、見えた。
私の目の前に氷が入ったお茶のグラスが置かれたのが。
ワイシャツの袖を捲った幸治君の腕、さっき思い浮かべてしまった腕よりも少ししっかりしたようにも思う腕が、視界の中に入ってきた。
幸治君の部屋の中、少しだけ見える幸治君の腕を見ただけでドキドキとした。
苦しいくらいにドキドキしてくる。
こんなにもドキドキとしてくる。
膝の上に広げた幸治君からプレゼントして貰ったタオルハンカチを無意識に両手で握り締めながら固まっていると、自分のグラスを待った幸治君は私のすぐ隣に座った。
私の足に幸治君の足がついてしまうのではないかというくらいに近くに。
それにも更にドキドキとしながらすぐ隣に座る幸治君のことを横から眺める。
幸治君の額や首回りは少しだけ汗ばんでいて、グラスに口をつけて氷が入ったお茶をゴクゴクと飲んでいく。
その度に幸治君の喉仏が動き、なんでか目が離せなくなる。
こんなにも目が離せなくなる。
「あ、先に飲んですみませんでした。
乾杯した方がよかったですか?」
お茶を一気に飲んだ幸治君がそんなことを聞いてきて、ドキドキとしたまま、幸治君を見詰めたまま、小さく頷いた。
そしたら「すみません」と幸治君が謝り、氷だけになったグラスを私の方に向けてきた。
私もグラスを持ち幸治君のグラスにゆっくりと近付ける。
ドキドキと苦しい胸を感じながら、ゆっくりと。
そして・・・
幸治君のグラスと私のグラスが触れ合った。
また、触れ合った・・・。
さっき初めて感じた幸治君の大きな手の熱さを思い出しながら、触れ合っているグラスを見下ろす。
なかなか離すことは出来ないグラスを。
なかなか離れることはないグラスを。
「・・・この部屋に家族以外の女の人を入れたのは2人目なので、めちゃくちゃ緊張してきました。」
私の他に女の人を部屋に入れたことがあるらしい幸治君が、そう言いながらグラスをパッと離した。
初めて入る男の人の部屋、幸治君の部屋はオフィス街の駅から数分歩いた所にある高級マンションだった。
安く貸してくれているとはいえ、“普通”の男の人が・・・借金がある男の人が住めるとは思えない高級マンション。
聞きたいことは沢山あったけれど、それを飲み込み幸治君が暮らしている部屋へと入っていく。
「散らかっててすみません。」
ずっと引いていた私の右手を離した幸治君は私のことをソファーに座らせた後、結構散らかっているリビングをテキパキと片付けていく。
その様子をソファーに座りながら眺める。
座った感じで分かる、このソファーも高級な物。
冷房がつけられたばかりのまだまだ暑い部屋の中、部屋に入りすぐにスーツのジャケットをハンガーに掛けた幸治君。
長袖のワイシャツだけどジャケットを着ていた時よりも幸治君の身体がよく分かる。
細いけれどしっかりとついている筋肉。
約2年前、最後に会った時は高校生の時から着ていた紺色の店名が書かれたTシャツ姿。
その時に見えていた幸治君の腕までなんでか思い出し、テキパキと片付けていく幸治君の姿に重ねてしまう。
“いけないコト”をしている気分になり、この“いけないコト”には慌てて幸治君から視線を逸らした。
ソファーに座りながら目の前にある高級そうなローテーブルをしばらく眺めていたら、見えた。
私の目の前に氷が入ったお茶のグラスが置かれたのが。
ワイシャツの袖を捲った幸治君の腕、さっき思い浮かべてしまった腕よりも少ししっかりしたようにも思う腕が、視界の中に入ってきた。
幸治君の部屋の中、少しだけ見える幸治君の腕を見ただけでドキドキとした。
苦しいくらいにドキドキしてくる。
こんなにもドキドキとしてくる。
膝の上に広げた幸治君からプレゼントして貰ったタオルハンカチを無意識に両手で握り締めながら固まっていると、自分のグラスを待った幸治君は私のすぐ隣に座った。
私の足に幸治君の足がついてしまうのではないかというくらいに近くに。
それにも更にドキドキとしながらすぐ隣に座る幸治君のことを横から眺める。
幸治君の額や首回りは少しだけ汗ばんでいて、グラスに口をつけて氷が入ったお茶をゴクゴクと飲んでいく。
その度に幸治君の喉仏が動き、なんでか目が離せなくなる。
こんなにも目が離せなくなる。
「あ、先に飲んですみませんでした。
乾杯した方がよかったですか?」
お茶を一気に飲んだ幸治君がそんなことを聞いてきて、ドキドキとしたまま、幸治君を見詰めたまま、小さく頷いた。
そしたら「すみません」と幸治君が謝り、氷だけになったグラスを私の方に向けてきた。
私もグラスを持ち幸治君のグラスにゆっくりと近付ける。
ドキドキと苦しい胸を感じながら、ゆっくりと。
そして・・・
幸治君のグラスと私のグラスが触れ合った。
また、触れ合った・・・。
さっき初めて感じた幸治君の大きな手の熱さを思い出しながら、触れ合っているグラスを見下ろす。
なかなか離すことは出来ないグラスを。
なかなか離れることはないグラスを。
「・・・この部屋に家族以外の女の人を入れたのは2人目なので、めちゃくちゃ緊張してきました。」
私の他に女の人を部屋に入れたことがあるらしい幸治君が、そう言いながらグラスをパッと離した。