お嬢様は“いけないコト”がしたい
「職場のトップの人の従妹で、同じ職場で働いている女の人ですけどね。
玄関の方にある1部屋は忙しすぎて家に帰れなかった職場の人が寝泊まりしていた部屋で、その女の人が従兄であるトップの人と2人で泊まったことが何度かありました。
俺は女の従姉妹がいないのでよく分かりませんけど、異性のイトコ同士で仲良く同じ部屋で眠られるものなんですかね?」
そんな話にはなんでか凄く安心し、冷たいお茶を一口だけ口に含んでから返事をした。
「私も異性のイトコが何人かいるけど、小さな頃から頻繁に会ってたから同じ部屋で寝るくらい何でもないかな。」
「そうなんですか?
2人が泊まる時は俺の方が変に気を付けちゃいましたよ。
変なトコロを見たらアレなので、部屋の扉をノックして返事があっても数秒後に扉を開けたり。」
「変なトコロを見ちゃうことなんて、そんなことは滅多に起こらないんじゃない?」
私が笑いながら言うと、幸治君は真剣な顔で首を横に振った。
「さっきのラーメン屋を開いた2人、高3の終わり頃から家の中で2人で“いけないコト”をしまくってて、俺は何度も目撃して。
大学を卒業してすぐに2人は入籍したので今では笑い話になりましたけど、兄妹でそんなことをしている2人に当時は1人で思い悩んでました。」
「そうだったんだ?
私に相談してくれればよかったのに。」
幸治君がスーツのポケットから取り出したスマホ、それをローテーブルに置いたのを眺めながら言った。
「羽鳥さんにもしも相談してたら何て言ってくれましたか?」
笑いながら聞いてきた幸治君に、私は少し悩んでから答えた。
幸治君には何でも言えるから。
きっと、何でも言えているはずだから。
「“私も異性といけないコトがしてみたいな”って、答えてたと思う。」
私の言葉に幸治君は驚いた顔をした。
こんなに驚かれたことに思わず笑ってしまう。
「私は財閥の分家の女だから政略結婚に使われることもあり得る。
だから綺麗な異性関係でいるよう教育されている話はしたことがあるよね?」
「はい・・・。」
「綺麗でいたよ、私はずっと。
うちの財閥の他の女の子達はそんなことを守り続けていなかったけど、私はお父さんからの教育を守り続けながら歳を重ねていった。
でも本当は私も他のみんなみたいに異性と“いけないコト”もしてみたかったよ。」
「そうだったんですか・・・。
それはハッキリと聞いたことがなかったので今言われて驚きました。」
「“中華料理屋 安部”で幸治君に相談してたら、何て言ってくれてたかな?」
小さく笑いながら聞いた。
幸治君は私の顔から視線を逸らし、何処か遠くを眺めているのが何となく分かる。
もしかしたら幸治君と出会った時の24歳の私や25歳の私を思い浮かべてくれているのかもしれない。
高校2年生、高校3年生だった時の幸治君の姿を今の幸治君に重ねながら、幸治君の横顔を眺める。
そしたら、“幸治君”がゆっくりと私に振り向いてきた。
高校2年生、高校3年生の頃の、まだまだ大人になりきれてはいないような顔、そして今の大人の男の人の顔になった顔、その2つの“幸治君”が重なった顔で。
そんな顔で私のことを見詰め・・・
「“俺でよければそのいけないコトに付き合います。”」
そう言った。
玄関の方にある1部屋は忙しすぎて家に帰れなかった職場の人が寝泊まりしていた部屋で、その女の人が従兄であるトップの人と2人で泊まったことが何度かありました。
俺は女の従姉妹がいないのでよく分かりませんけど、異性のイトコ同士で仲良く同じ部屋で眠られるものなんですかね?」
そんな話にはなんでか凄く安心し、冷たいお茶を一口だけ口に含んでから返事をした。
「私も異性のイトコが何人かいるけど、小さな頃から頻繁に会ってたから同じ部屋で寝るくらい何でもないかな。」
「そうなんですか?
2人が泊まる時は俺の方が変に気を付けちゃいましたよ。
変なトコロを見たらアレなので、部屋の扉をノックして返事があっても数秒後に扉を開けたり。」
「変なトコロを見ちゃうことなんて、そんなことは滅多に起こらないんじゃない?」
私が笑いながら言うと、幸治君は真剣な顔で首を横に振った。
「さっきのラーメン屋を開いた2人、高3の終わり頃から家の中で2人で“いけないコト”をしまくってて、俺は何度も目撃して。
大学を卒業してすぐに2人は入籍したので今では笑い話になりましたけど、兄妹でそんなことをしている2人に当時は1人で思い悩んでました。」
「そうだったんだ?
私に相談してくれればよかったのに。」
幸治君がスーツのポケットから取り出したスマホ、それをローテーブルに置いたのを眺めながら言った。
「羽鳥さんにもしも相談してたら何て言ってくれましたか?」
笑いながら聞いてきた幸治君に、私は少し悩んでから答えた。
幸治君には何でも言えるから。
きっと、何でも言えているはずだから。
「“私も異性といけないコトがしてみたいな”って、答えてたと思う。」
私の言葉に幸治君は驚いた顔をした。
こんなに驚かれたことに思わず笑ってしまう。
「私は財閥の分家の女だから政略結婚に使われることもあり得る。
だから綺麗な異性関係でいるよう教育されている話はしたことがあるよね?」
「はい・・・。」
「綺麗でいたよ、私はずっと。
うちの財閥の他の女の子達はそんなことを守り続けていなかったけど、私はお父さんからの教育を守り続けながら歳を重ねていった。
でも本当は私も他のみんなみたいに異性と“いけないコト”もしてみたかったよ。」
「そうだったんですか・・・。
それはハッキリと聞いたことがなかったので今言われて驚きました。」
「“中華料理屋 安部”で幸治君に相談してたら、何て言ってくれてたかな?」
小さく笑いながら聞いた。
幸治君は私の顔から視線を逸らし、何処か遠くを眺めているのが何となく分かる。
もしかしたら幸治君と出会った時の24歳の私や25歳の私を思い浮かべてくれているのかもしれない。
高校2年生、高校3年生だった時の幸治君の姿を今の幸治君に重ねながら、幸治君の横顔を眺める。
そしたら、“幸治君”がゆっくりと私に振り向いてきた。
高校2年生、高校3年生の頃の、まだまだ大人になりきれてはいないような顔、そして今の大人の男の人の顔になった顔、その2つの“幸治君”が重なった顔で。
そんな顔で私のことを見詰め・・・
「“俺でよければそのいけないコトに付き合います。”」
そう言った。