お嬢様は“いけないコト”がしたい
「めちゃくちゃ可愛いし、こんなの“いけないトコロ”すぎて・・・。」



腰の動きを止めた幸治君が私の胸を凝視し続けたまま、指先で少しだけ私の胸の先に触れてきた。



「・・・アッ!」



「こっちも見せて・・・。」



反対の胸の先もカップをずらし出してきて、そして・・・



両方の胸の先を両手の指先で優しく弄ってきた。



「ンンッ・・・っ・・・っ・・・!!」



「あ・・・っ、羽鳥さん・・・“いけないトコロ”、擦り付けてこないでください・・・っ」



「だって、凄くキュッてして・・・私の“いけないトコロ”、凄く変で・・・。」



「胸にあるこの“いけないトコロ”、気持ち良いですか・・・?」



「気持ち良いとか・・・っそういうのはよく分からないよ・・・。」



「凄い膨れて固くなってきましたよ?」



私の胸を凝視しているかと思ったら私の顔に視線を戻してくる。



「その顔もヤバいです・・・その顔で見詰められるのも無理です・・・。」



「顔は仕方ないでしょ、もう31歳になったんだから・・・っ」



私が怒ると幸治君は楽しそうに笑う。



「でも、羽鳥さん今も全身にお金掛けてるんじゃないですか?
きっと他の31歳の女の人より良い状態ですよ。」



「うん、今もそれだけはお金掛けてる。
もしかしたら政略結婚に使われることもあるだろうしと思って・・・。
少しでも綺麗な状態でいることが正しいことだから・・・。」



私の言葉に幸治君は真剣な顔で見下ろしてきて・・・



私の胸からゆっくりと両手を離した。



そして、優しい顔で私に笑い掛けて・・・



ソッと私のことを両手で抱き締めてきた。



腰を動かすこともなく、静かに呼吸を繰り返しながら、優しく抱き締めてきた。



「あと30分・・・このまま話しませんか?
今日が終わればもう会うこともなくなりますし、俺は羽鳥さんと喋ることもしたいです。
最後に、もう少しだけ喋りたいです。」



そう言われ・・・



私は幸治君の背中にゆっくりと両手を回した。



右手にはしっかりとタオルハンカチを握り締めたまま、幸治君の身体を抱き締めた。



「凄くガッシリしてるね・・・。
大人の男の人になっててビックリしちゃった。」



笑いながらそう言うと、幸治君は私を抱き締める両手に少しだけ力を込めた。



「このスーツを着る為に身体を鍛えて維持までしなくちゃいけなくて、死ぬほど時間がない中で何をさせられているんだと思っていましたけど、あの人に連れ出して貰えて良かったなと今初めてこんなに思いました。」



幸治君が私の身体をギュッと強く抱き締めてきた。



「煩くて面倒でヤバい人なんですけど、俺を“中華料理屋 安部”から連れ出してくれた人で。
俺、定時制の高卒ですけど、“中華料理屋 安部”から抜け出すことが出来ました。」



「そっか・・・。
でも、私は“中華料理屋 安部”が好きだったよ。」



私も幸治君の身体を強く抱き締めながら言う。



「お嬢様の私が常連客になっちゃうくらい、“中華料理屋 安部”が大好きだったよ。」



何も言わない幸治君に続ける。



「“中華料理屋 安部”がいてくれたから、私は頑張ることが出来てた。
崩壊していくような財閥の中で、お父さんのように綺麗で正しく生きようとすることが出来てた。
私自身が“小関一美”を否定することも“羽鳥一美”を嫌いになることもなかったのは、“中華料理屋 安部”がいてくれたからだよ。」



なんでか涙が流れてきて、それでも笑いながら伝えた。



「私は“中華料理屋 安部”のことが凄く凄く好きだったよ。」
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