お嬢様は“いけないコト”がしたい
しっかりと歩きながらエレベーターに乗り込み、上の方にある幸治君の部屋の階からエレベーターで降りていく。
“エレベーターってこんなに速かったかな”と思うくらい速く降りていく。



そしてすぐに1階に着いた。



なんでか分からないけれど涙が流れてきて、それを幸治君からプレゼントして貰ったタオルハンカチで拭いながらエレベーターを出た。



エントランスを歩き地上に出ると、マンションの前の道路には幸治君から伝えられていたナンバーのタクシーが止まっている。



そのタクシーを見て思わず立ち止まった。



だって、“普通”のタクシーではなかったから。



高級車のタクシーだったから。



それが分かり、泣きながら小さく笑った。



「私が知ってる幸治君じゃなくなっちゃったのかな・・・。
昔はあんなに子どもっぽかったのに・・・。」



どんな姿でも見せていたのは私だけではない。
幸治君だって私に色んな姿を見せていた。



色んな・・・



本当に、色んな姿を・・・。



それを思い出しながら、タオルハンカチをまた唇にソッとつけた。



そしてそのまま高級車のタクシーへと歩きだした時・・・
























「羽鳥さん!!!!」



私を“羽鳥さん”と呼ぶ、幸治君の大きな声が背中から聞こえた。



それには驚きながら振り向くと幸治君は脱いでいたはずのスーツのジャケットを羽織っていて、息を切らしながら私の目の前に走ってきた。



驚いている私よりも驚いた顔になった幸治君。



それから真面目な顔になり、右手を私の顔にゆっくりと伸ばしてきた。



そして・・・



私の頬を大きくて熱い手の平で包んできた。



親指で私の目の下を優しく撫でてきて・・・



「なに泣きですか?」




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