お嬢様は“いけないコト”がしたい
3
月曜日、朝



「「羽鳥さん、何かありましたか?」」



増田ホールディングスの経理部に出社し自分のデスクに着いてから数分。
私が去年から教育担当をしている2人の女の子が仲良く・・・ではないはずだけど、2人で並びながら出勤してきて、挨拶よりも先に声を合わせながら私にそう言ってきた。



「福富さん、佐伯さん、おはよう。
仕事?会社?私は特に何も聞いてないよ?」



今日は福富さんの名前を先に呼んでからそう答えた。
この2人は何かと口喧嘩ばかりで、入社してすぐの頃に「いつも佐伯さんばっかり先に呼ぶ」と福富さんが可愛くむくれてしまったから。



「違います、羽鳥さんに!!
羽鳥さんいつもよりもご機嫌ですから!」



福富さんが可愛く元気よくそう言いながらデスクに着くと、福富さんと私の間のデスクに佐伯さんも着いた。



「羽鳥さんが増田財閥の女の人と周りの人から教えられた時は身構えましたけど、羽鳥さんはいつも穏やかで優しくて話しやすくて仕事まで出来る、“完璧なお嬢様の先輩”っていう感じで・・・。」



佐伯さんが綺麗で可愛い顔を私に向け、ジッと見詰めてきた。



「でも、演技ですよね?」



その言葉には驚いていると、福富さんが大きく笑った。



「みんな外面があるに決まってるじゃん!!
家の中にいる時とはみんな大抵別人でしょ!!」



「アナタは変わらなそうだよね、外でもそんなに子どもっぽくいられて羨ましい。」



「そんなに羨ましいなら太ってみれば?
その完璧過ぎる身体がなくなれば少しは子どもっぽくなるんじゃない?
まだ24歳なのにそんな見た目のせいで子どもっぽくいられないなんて可哀想。」



幸治君と同じ学年の年である2人がいつものように口喧嘩を始めてしまうかと思ったら、すぐにまた2人で私のことを見てきた。



そして先に口を開いたのは佐伯さん。



「羽鳥さん、今日は凄く自然体です。
そっちの方がもっと素敵ですよ。」



「佐伯さんの意見に初めて同意です!!
今日は何か良い感じですよ!!
プライベートで何かあったんですか?」



「アナタ、そういうことをいつも軽く聞いて・・・。」



佐伯さんがそう言いながらも私の方から視線を逸らさない。
そんな2人のコンビには今日も笑いながら答えた。



「土曜日に引っ越しをして家を出たんだ。」



「増田財閥のお嬢様ですからね、羽鳥さん!!
増田財閥から解放されていない分家の人って羽鳥さんと羽鳥さんのお父さんとお兄さんくらいじゃないですか?
みんな増田財閥の会社じゃなくて永家財閥の方で働いてたりするんですよね?」
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