お嬢様は“いけないコト”がしたい
私としっかりと目が合っているにも関わらず、女の子は全然驚いた顔をしていない。



「こんな姿ですみません!!!」



そう謝った後にソファーから立ち上がり窓を素早く閉め、棚の上に置かれたリモコン立ての中からエアコンのリモコンをパッと選び取りエアコンをすぐにつけた。



「涼しくなるまでこの格好です、すみません!!
コウ君と私の分の夜ご飯しか作ってないですけど、数日分の作り置きも作ってあるから大丈夫かな~・・・。」



女の子は下着のパンツ1枚の姿のままキッチンへと歩いていく。



グチャグチャの頭の中で色んなことを思っているけれど、その女の子を見て強く思うことは1つで。



“若い子の身体はやっぱり違うな”と・・・。



“私がいくらお金を掛けて全身を綺麗に維持しようとしても、31歳になった私の身体とはやっぱり全然違うな”と・・・。



そんなことを考えながら女の子がキッチンに立つ姿を眺めていた。



そしたら・・・



「あ、コウ君からそこの留守電にメッセージが入っていましたけど、今日は20時くらいに帰ってくるそうですよ!
ご飯先に食べますか?
それともお風呂にしますか?」



そんなことまで聞かれた。
この部屋で仕事もしていたという幸治君や職場の人達。
ファックスを使うこともあるので家電があるこの部屋。



幸治君がその留守電に私宛に伝言を残す約束をしてくれていた。
今日はそれを確認するのを楽しみに帰って来た。



私のスマホではなくこの部屋の家電だけど、幸治君が私宛に伝言を残してくれるのを楽しみにしていた。



凄く凄く楽しみに帰って来た。



なんでか泣きそうになる。
泣きそうになりながら、幸治君のことを“コウ君”と呼び、幸治君のご飯を作り、この部屋のことを分かりきっているような、私よりもずっと若いほぼ裸の女の子を眺めながら言った。



凄く凄く苦しくなりながら、言った。



「私は先週の土曜日からこの部屋で幸治君と一緒に住み始めた羽鳥と申します。
幸治君からは何も聞いていませんでして・・・。
失礼ですが、どちら様でしょうか?」
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