お嬢様は“いけないコト”がしたい
そう呟くように言ってから、私のことをゆっくりと見てきた。



「コウ君から我が家で預かってる合鍵を返すように言われたの。
お小遣いが欲しい時にたまにきょうだい達がこの部屋の炊事洗濯をしたり、コウ君の同僚達におもてなしをしてて。
だから今日も合鍵を返しに来たついでに料理を作っておいたんだよね。」



可愛い顔で笑いながら冷蔵庫を指差した。



「よかったら食べてね、夜ご飯は2人分あるから!」



「うん、安部家の味を教えて貰うね。」



「安部家の味とか全然ないから!!
いつも料理をする人が違うからね、なんといってもきょうだいが6人もいるし!!」



幸治君の妹が笑いながらキッチンから出てソファーへと戻り、綺麗に畳まれている洋服を着ていく。



それには心から安心し、私もキッチンを出ながら、幸治君の妹が可愛いデザインのティーシャツとハーフパンツを身につけていく姿を眺めた。



「可愛いお洋服だね。」



「ね~!!憧れのブランドで、アルバイトの求人に応募してみたら受かって!!
大学生にしては高い値段だけど、社割りで安くなるんだ~!!」



「それは嬉しいね。
私はラフなお洋服を持ってないからな。
今度ラフなお洋服も欲しいなと思ってて。
私は31歳なんだけど、31歳の私が似合いそうなブランドとか知ってるかな?」



「え!!!?お姉さん31なの!!!?
・・・まあ、でも・・・言われてみればそうなのかな・・・めちゃくちゃ美人で大人っぽいし。
いや、でも肌とか身体とかめっっちゃ綺麗!!」



「うん、お金を掛けてるからね。」



私がそう答えると幸治君の妹は大きく笑い、ソファーの近くに置いていた鞄の中を漁り始めた。



そして、1枚のカードを私に渡してくれた。



「ここ、私がバイトをしているお店の姉妹店の1つで。
私のバイト先は“大人でも可愛い”をイメージしてるけど、大人の女の人が着るには結構甘めのデザインと少し幼さも残しているデザインで。
でもこっちの姉妹店は“綺麗だけど普段着に”がイメージだから、お姉さんに似合いそう。」



「ありがとう、今週末にでも行ってみる。」



「首元が詰まってるデザインばっかりなんだけど、流石は大きな会社っていう感じで、数日の時間を貰えば首元を3パターンのデザインに直すことも出来るから!!」



鞄を漁った時に飛び出た物、それを仕舞いながら良い情報まで教えてくれた幸治君の妹に笑顔で頷いた。



幸治君の妹が飛び出た物を仕舞っている姿を眺めながら、頷いた。



そしたら・・・



そしたら・・・



幸治君の妹が手に持つハンカチが見えた。



タオルハンカチが・・・



私のタオルハンカチが見えた・・・。
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