お嬢様は“いけないコト”がしたい
素直に出した私の言葉にお母さんは優しい顔で私のことを見詰める。
「いつかお父さんとお母さんがしたことを理解してくれる。
うちの財閥は崩壊を迎えているの。
このまま財閥の人間でいたら一美は幸せになれない。
だからお父さんはお母さんと離婚をすることを決めてくれたの、お母さんと一美をあの財閥から逃がす為に。」
さっきのレストランでも聞かされた話をお母さんがもう1度してくる。
飲み込まずに言った私の言葉に、お母さんはそんな綺麗で正しいような言葉を掛けてくる。
そんな返事が聞きたかったのではない。
私はそんな言葉が聞きたかったのではない。
何て答えて欲しかったのかは分からないけれど、それは強く思う。
強く強く思う。
涙を流しながら、涙だけではなく嗚咽まで、それどころか鼻水まで流しながら。
そしたら・・・
「アナタ、ハンカチは?」
俯いていた私の頭の上からお母さんのそんな言葉が聞こえてきた。
私に言ったのではなくあの男の子に言ったのだと分かる。
「・・・ハンカチなら、娘さんが膝に広げてますよ?」
「アナタね~・・・随時とお若いみたいだけど、お店に立つからにはしっかりとお客様におもてなしをしないと、来店してくださったお客様に失礼でしょ?」
「・・・すみません。
ハンカチはありませんけど、タオルで大丈夫ですか?」
お母さんの言葉にまた男の子が謝り、私はそれを聞いてからすぐにテーブルの上に置かれていたティッシュを抜き取った。
「もう・・・やめてよ、お母さん・・・っ。
烏龍茶1本で休ませて貰ってるのは私達なのに、お母さんもイライラしてるからって男の子に当たらないでよ・・・っ」
「イライラしているわけではないわよ。
ただ、車であと少し行けばいつものお店だってあったのに、一美がこんなお店に入っていくから・・・。」
「あれ以上車に乗れなかった・・・っ!!
いつものお店になんて行きたくなかった・・・っ!!」
ティッシュで涙や鼻水を拭いながらそう叫ぶ。
1度出した言葉は、気持ちは、止まることなく出て来る。
「お父さんとお母さんに決められたコトをしていくだけなんて嫌・・・っ!!
私はただの“羽鳥”になったとしても財閥には残りたい!!
財閥の本家の人間の為に生きる分家の女でいたい!!
お父さんが頑張る姿が私は好きだったの!!
大好きだったの・・・っ!!」
お父さんは不器用な人で。
子どもの私から見ても分かるくらい、お父さんはとても不器用な人だった。
私はそんなお父さんが頑張る姿が好きだった。
そんなお父さんが財閥の本家の人間の為に、そしてお母さんの為に何かを頑張る姿が大好きだった。
なのに・・・
それなのに・・・
「こんな頑張り方なんてして欲しくなかった・・・っ!!
全然嬉しくない・・・っ!!
こんな誕生日プレゼントなんて何も嬉しくない!!!」
困った顔で笑っているお母さんにぶつける。
もう何も止まらないのでぶつける。
「私の23年間は何だったの!?
沢山我慢してきた23年間は何だったの!?
我慢してきた・・・!!!
私は沢山我慢してきた・・・!!!
でも、まだまだ我慢出来た・・・!!!
私はどんな我慢でも出来る・・・!!!
お父さんとお母さんが離婚しなくちゃいけないくらいなら、私はどんな我慢でも続けられたのに・・・!!!」
そう叫んだ。
そう吐き出した。
さっきのレストランで何度も何度も飲み込みながら食事をしていた気持ちを、この胸から吐き出した。
そしたら・・・
そしたら・・・
「・・・・・・・・っっっ」
本当に・・・吐き出してしまった。
突然強く込み上げてきて、口を押さえながらも床に吐き出してしまった。
「いつかお父さんとお母さんがしたことを理解してくれる。
うちの財閥は崩壊を迎えているの。
このまま財閥の人間でいたら一美は幸せになれない。
だからお父さんはお母さんと離婚をすることを決めてくれたの、お母さんと一美をあの財閥から逃がす為に。」
さっきのレストランでも聞かされた話をお母さんがもう1度してくる。
飲み込まずに言った私の言葉に、お母さんはそんな綺麗で正しいような言葉を掛けてくる。
そんな返事が聞きたかったのではない。
私はそんな言葉が聞きたかったのではない。
何て答えて欲しかったのかは分からないけれど、それは強く思う。
強く強く思う。
涙を流しながら、涙だけではなく嗚咽まで、それどころか鼻水まで流しながら。
そしたら・・・
「アナタ、ハンカチは?」
俯いていた私の頭の上からお母さんのそんな言葉が聞こえてきた。
私に言ったのではなくあの男の子に言ったのだと分かる。
「・・・ハンカチなら、娘さんが膝に広げてますよ?」
「アナタね~・・・随時とお若いみたいだけど、お店に立つからにはしっかりとお客様におもてなしをしないと、来店してくださったお客様に失礼でしょ?」
「・・・すみません。
ハンカチはありませんけど、タオルで大丈夫ですか?」
お母さんの言葉にまた男の子が謝り、私はそれを聞いてからすぐにテーブルの上に置かれていたティッシュを抜き取った。
「もう・・・やめてよ、お母さん・・・っ。
烏龍茶1本で休ませて貰ってるのは私達なのに、お母さんもイライラしてるからって男の子に当たらないでよ・・・っ」
「イライラしているわけではないわよ。
ただ、車であと少し行けばいつものお店だってあったのに、一美がこんなお店に入っていくから・・・。」
「あれ以上車に乗れなかった・・・っ!!
いつものお店になんて行きたくなかった・・・っ!!」
ティッシュで涙や鼻水を拭いながらそう叫ぶ。
1度出した言葉は、気持ちは、止まることなく出て来る。
「お父さんとお母さんに決められたコトをしていくだけなんて嫌・・・っ!!
私はただの“羽鳥”になったとしても財閥には残りたい!!
財閥の本家の人間の為に生きる分家の女でいたい!!
お父さんが頑張る姿が私は好きだったの!!
大好きだったの・・・っ!!」
お父さんは不器用な人で。
子どもの私から見ても分かるくらい、お父さんはとても不器用な人だった。
私はそんなお父さんが頑張る姿が好きだった。
そんなお父さんが財閥の本家の人間の為に、そしてお母さんの為に何かを頑張る姿が大好きだった。
なのに・・・
それなのに・・・
「こんな頑張り方なんてして欲しくなかった・・・っ!!
全然嬉しくない・・・っ!!
こんな誕生日プレゼントなんて何も嬉しくない!!!」
困った顔で笑っているお母さんにぶつける。
もう何も止まらないのでぶつける。
「私の23年間は何だったの!?
沢山我慢してきた23年間は何だったの!?
我慢してきた・・・!!!
私は沢山我慢してきた・・・!!!
でも、まだまだ我慢出来た・・・!!!
私はどんな我慢でも出来る・・・!!!
お父さんとお母さんが離婚しなくちゃいけないくらいなら、私はどんな我慢でも続けられたのに・・・!!!」
そう叫んだ。
そう吐き出した。
さっきのレストランで何度も何度も飲み込みながら食事をしていた気持ちを、この胸から吐き出した。
そしたら・・・
そしたら・・・
「・・・・・・・・っっっ」
本当に・・・吐き出してしまった。
突然強く込み上げてきて、口を押さえながらも床に吐き出してしまった。