お嬢様は“いけないコト”がしたい
私の部屋の扉から入ってきた幸治君は驚いた顔になり、ベッドで横になる私に近付いてきた。



「そんなにお腹痛いですか?」



「痛いよ~・・・。」



素直に吐き出した私に幸治君は物凄く心配そうな顔をして、私の顔に右手を伸ばしてきた。
そして私の頬をソッと包み、親指で優しく撫でて・・・



「泣くくらい痛いですか?」



そう聞かれ、自分が泣いていることにやっと気付いた。



「痛くて苦しい・・・。」



実際の身体なのか私の気持ちなのか、込み上がってくる“何か”を吐き出そうとしてしまう。



「市販の胃薬ですけど買ってきましたので飲みます?
それとも救急外来行きます?」



「そんなのじゃ良くならないもん・・・。」



「そうなんですか・・・?
お嬢様はいつも具合が悪くなるとどうしてるんですか?」



「かかりつけのお医者さんの所でも良くならないもん・・・。」



私がそう吐き出すと幸治君は楽しそうに笑って。



「俺に出来ることは何ですか?」



「何もないよ・・・。
本当は幸治君が私に付き合ってくれることないんだよ・・・。」



「俺はまだ若いですし、休みの日に特に予定もないので。」



「あの綺麗で可愛い女の子達と遊べばいいのに・・・。」



「綺麗で可愛い女の子達って?」



「咲希ちゃんがすすめてくれたお店にいた女の子達。」



「そこに綺麗で可愛い女の子なんていました?」



そんな返事には驚き、上半身を少しだけ起こした。



「みんな若くて、綺麗で可愛いお顔をしてる女の子達だったけど!!」



「あの人達みんな俺より年上ですし、顔も綺麗で可愛いに入るんですかね?」



「嘘でしょ・・・!?
幸治君、結構面食いなの?」



「面食いというか何というか・・・。
顔なら俺の3人の妹の方がアレですし、あの人が大好きな俺の同級生も可愛い顔ですし、あの人の従妹は綺麗で可愛い顔をしているので、あの女の子達の見た目を見て特に何の感想もないというか・・・。」



「そうなんだ・・・。
それなら私は本当にオバサンだよね・・・。
幸治君からしてみたら、31歳になった私はオバサンでしかないよね・・・。」



“何か”が込み上げてくる・・・。



この胸から強く込み上げてくる・・・。



強く、強く、込み上げてきて・・・。



私は慌てて口を押さえながら立ち上がる。



「吐きそう・・・っ」



トイレへと大急ぎで走った。
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