お嬢様は“いけないコト”がしたい
「・・・・・っ・・・・・・っ」



トイレの中、込み上げてきた身体からの“何か”を吐き出していく。
幸治君と一緒に食べた凄く凄く美味しかったとんかつは、こんなにも“何か”になってしまい私の口から吐き出されていく。



実際に食べた量よりも多いような気がするくらい、吐き出されていく。



なのに、痛くて・・・。



なのに、苦しくて・・・。



実際の身体なのか気持ちなのか、そのどちらもなのか、とにかく痛くて苦しい。



無意識にお母さんの顔が浮かぶ。



お母さんだけではなく、お父さんの顔も浮かぶ。



そしたら、その時・・・



私の背中を優しく撫でられた。



それが幸治君の手なのだと分かる。
それが分かり、私は泣きながら吐き出し続ける。
涙も鼻水も嗚咽も、そして胸の方から実際に出てくる“何か”も。



「私・・・こんな姿しか幸治君に見せてなくて、嫌になる・・・。」



「こんな姿しか見てないので大丈夫ですよ。
今更引いたりとかないですし。
むしろめちゃくちゃ心配なんですけど。
食あたりですかね?」



「でも、幸治君何ともないでしょ?」



「そうですね、俺は特に何ともないですね。
食べ過ぎですかね?」



そう言われ、私はまた実際に吐き出した。



「全部吐き出した方がいいですよ。」



その言葉を聞き、私は言葉を吐き出した。



「多分、胃もたれじゃない・・・?
お腹は下してないし。
よく考えたらここ数年はそこまで脂っこい物は食べてなくて。
私・・・31歳になっちゃったから。
20代後半でもなく、私31歳になっちゃった・・・。」



なんでか凄く泣けてきて、1回トイレの水を流しながらまた泣いた。



「31歳になったら幸治君と一緒にとんかつも食べられなくなっちゃった・・・。
どんなにお金を掛けて全身を維持してても、実際の年齢には敵わないね・・・。」



「今日は昼を抜きましたし、あんな量を一気に食べて、久しぶりの揚げ物でお腹がビックリしたんですかね。
タイミングと量に気を付ければきっと一緒に食べられますよ。」



「そんなことをしないと幸治君と一緒にとんかつも食べられなくなっちゃった・・・。」



「そんなことでも付き合いますから大丈夫です。
羽鳥さんが残した物は俺が食べますし、なんなら俺が家でとんかつ作りますし。
俺、若いですし、俺、元料理人なので。」
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