お嬢様は“いけないコト”がしたい
私にそう言ってきた幸治君。
私のことが“あの時”も好きでいてくれた幸治君が、今はそんなことを言ってくる。
その言葉を聞き、私は“苦しい”と思った。
“苦しい”と思いながらも思い浮かんでくる。
さっき幸治君との過去を思い出していたからか、今は色んなことが思い浮かんでくる。
“例え好きな人がいても、こんな中華屋の俺が好きになったなんて相手には言えないし言いたくもない。
そんなの迷惑を掛けて困らせて俺から離れてしまうだけだから俺は絶対に言わない。
また会える未来があるなら、俺はずっとその想いを持ったまま我慢する。”
いつか聞いた幸治君からの言葉。
そして、その“好きな人”が私だったのだと知った25歳の3月10日。
幸治君の18歳の誕生日の日。
幸治君のその言葉を思い返し、“最後”になるはずだった日に知ることになった、男子高校生だった幸治君の私への想いも思い返す。
それらを“苦しい”中で考える。
すっかりと大人の男の人になった幸治君の姿を見詰めながら。
スーツ姿ではなく、私服姿でもすっかりと大人の男の人になった幸治君。
熱が籠った瞳で、真剣な顔で私に伝えようとしてくる。
“何か”を伝えようとしてくる。
そんな幸治君に私は深く頷いた。
「私も幸治君を異性として好きになることは絶対にないよ。」
“苦しい”と感じながら伝えた。
でもそれは、私の胸が“苦しい”と感じたわけではない。
幸治君の胸が“苦しい”と感じていると知りながらも、私はそう伝えた。
幸治君が私に“何”をしてくれているのかやっと気付いたから。
幸治君は私の為に今の自分が出来ることをしようとしてくれている。
楽しく生きることを諦めていたお嬢様の私。
31歳の誕生日の夜、お父さんから改めて好きなように生きていいと言われたタイミングで再会した幸治君。
“中華料理屋 安部”という場所ではなく、新しく生まれ変わった“ラーメン 安部”という場所で。
私が増田財閥の本家の為に生きる分家の女のままだと幸治君が思っていた時も、私が“いけなコト”をするのに付き合うと言ってくれた幸治君。
そしてもう分家の女として生きる必要がないと知った幸治君は、私にこの部屋に一緒に住むよう言ってくれた。
お嬢様の私が“いけなコト”をするのに私が満足をするまで付き合うと、そう言ってくれた。
7歳も8歳も年下の男の子、“普通”になれているという幸治君が、私にそう言ってくれた。
幸治君が私に“何”をしてくれようとしているのかがやっと分かり、幸治君の胸のことを想うと“苦しい”と思っているとも分かるけれど、私はティッシュを口から離し笑いながら幸治君に吐き出した。
「でも、幸治君はまだまだ若いからね。
私の“いけなコト”に付き合うくらい何でもないよね?」
「はい、何でもありません。」
「私が満足するまで付き合って?
どこが“最後”かは分からないけど、必ず解放するから。」
「はい。
楽しく生きてください、羽鳥さん。
“いけなコト”を沢山しましょう。」
「うん、私は楽しく生きる。
人生で初めて、私は楽しく生きる。」
幸治君と一緒に住むこの部屋、トイレの中でそう吐き出す。
実際に身体の中の“何か”を吐き出した後、幸治君にそう吐き出した。
私のことを熱が籠った瞳で、真剣な顔で見詰めてくる幸治君に。
この前再会し、きっとまた私のことを異性として好きでいてくれている幸治君に。
そんな幸治君からのエゴともワガママとも言えるようなモノを受け取りながら、そう吐き出した。
私だって受け取れる。
幸治君が渡してきたモノなら何でも受け取れる。
私はそういう常連客だった。
私はそのくらいの常連客だった。
“中華料理屋 安部”のことが大好きで仕方ない、ただの“羽鳥さん”だった。
「ごめん・・・また吐きそう・・・っ」
出会った瞬間からヤバいだけでしかなかった、ただの“羽鳥さん”。
「お腹が大丈夫になるまでずっと一緒にいて・・・っ凄く苦しくて怖い・・・っ」
「はい、いつまでも付き合います。」
ずっと頑張って生きてきた私の、人生で初めてのお休みの日なのかもしれない。
今はただ、私のことをきっと大好きでいてくれている幸治君との時間を楽しむだけ楽しもうと強く自分自身に誓った。
私のことが“あの時”も好きでいてくれた幸治君が、今はそんなことを言ってくる。
その言葉を聞き、私は“苦しい”と思った。
“苦しい”と思いながらも思い浮かんでくる。
さっき幸治君との過去を思い出していたからか、今は色んなことが思い浮かんでくる。
“例え好きな人がいても、こんな中華屋の俺が好きになったなんて相手には言えないし言いたくもない。
そんなの迷惑を掛けて困らせて俺から離れてしまうだけだから俺は絶対に言わない。
また会える未来があるなら、俺はずっとその想いを持ったまま我慢する。”
いつか聞いた幸治君からの言葉。
そして、その“好きな人”が私だったのだと知った25歳の3月10日。
幸治君の18歳の誕生日の日。
幸治君のその言葉を思い返し、“最後”になるはずだった日に知ることになった、男子高校生だった幸治君の私への想いも思い返す。
それらを“苦しい”中で考える。
すっかりと大人の男の人になった幸治君の姿を見詰めながら。
スーツ姿ではなく、私服姿でもすっかりと大人の男の人になった幸治君。
熱が籠った瞳で、真剣な顔で私に伝えようとしてくる。
“何か”を伝えようとしてくる。
そんな幸治君に私は深く頷いた。
「私も幸治君を異性として好きになることは絶対にないよ。」
“苦しい”と感じながら伝えた。
でもそれは、私の胸が“苦しい”と感じたわけではない。
幸治君の胸が“苦しい”と感じていると知りながらも、私はそう伝えた。
幸治君が私に“何”をしてくれているのかやっと気付いたから。
幸治君は私の為に今の自分が出来ることをしようとしてくれている。
楽しく生きることを諦めていたお嬢様の私。
31歳の誕生日の夜、お父さんから改めて好きなように生きていいと言われたタイミングで再会した幸治君。
“中華料理屋 安部”という場所ではなく、新しく生まれ変わった“ラーメン 安部”という場所で。
私が増田財閥の本家の為に生きる分家の女のままだと幸治君が思っていた時も、私が“いけなコト”をするのに付き合うと言ってくれた幸治君。
そしてもう分家の女として生きる必要がないと知った幸治君は、私にこの部屋に一緒に住むよう言ってくれた。
お嬢様の私が“いけなコト”をするのに私が満足をするまで付き合うと、そう言ってくれた。
7歳も8歳も年下の男の子、“普通”になれているという幸治君が、私にそう言ってくれた。
幸治君が私に“何”をしてくれようとしているのかがやっと分かり、幸治君の胸のことを想うと“苦しい”と思っているとも分かるけれど、私はティッシュを口から離し笑いながら幸治君に吐き出した。
「でも、幸治君はまだまだ若いからね。
私の“いけなコト”に付き合うくらい何でもないよね?」
「はい、何でもありません。」
「私が満足するまで付き合って?
どこが“最後”かは分からないけど、必ず解放するから。」
「はい。
楽しく生きてください、羽鳥さん。
“いけなコト”を沢山しましょう。」
「うん、私は楽しく生きる。
人生で初めて、私は楽しく生きる。」
幸治君と一緒に住むこの部屋、トイレの中でそう吐き出す。
実際に身体の中の“何か”を吐き出した後、幸治君にそう吐き出した。
私のことを熱が籠った瞳で、真剣な顔で見詰めてくる幸治君に。
この前再会し、きっとまた私のことを異性として好きでいてくれている幸治君に。
そんな幸治君からのエゴともワガママとも言えるようなモノを受け取りながら、そう吐き出した。
私だって受け取れる。
幸治君が渡してきたモノなら何でも受け取れる。
私はそういう常連客だった。
私はそのくらいの常連客だった。
“中華料理屋 安部”のことが大好きで仕方ない、ただの“羽鳥さん”だった。
「ごめん・・・また吐きそう・・・っ」
出会った瞬間からヤバいだけでしかなかった、ただの“羽鳥さん”。
「お腹が大丈夫になるまでずっと一緒にいて・・・っ凄く苦しくて怖い・・・っ」
「はい、いつまでも付き合います。」
ずっと頑張って生きてきた私の、人生で初めてのお休みの日なのかもしれない。
今はただ、私のことをきっと大好きでいてくれている幸治君との時間を楽しむだけ楽しもうと強く自分自身に誓った。