お嬢様は“いけないコト”がしたい
7
昨晩は幸治君もお風呂に入れなかったので、幸治君が先にシャワーを浴びていくのを湯船に浸かりながら眺める。
「ここのお風呂、椅子がないよね。
立ってシャワーを浴びるのが好きなの?」
「俺は特に何の拘りもないんですけど、あの人が風呂場にある椅子に座れないらしくて。
水に濡れたまま放置しておいた椅子に座るとか無理らしいですよ?」
「・・・ねぇ、本当に煩くて面倒でヤバい人じゃない?」
「そうですよ、だから言ってるじゃないですか。
液晶テレビを買ったは良いけど気に入らないと言ってこの部屋に持ってきたり、ソファーを買ったは良いけどソファーはいらなかったとこの部屋に持ってきたり、ベッドもダイニングテーブルもそんな感じで、この部屋の中にある家具家電は全てあの人が増やしていった物です。
あの人は結局古すぎるくらい古い家具家電を使い続けていますね。」
「それ・・・言い訳してるだけで、実は幸治君にプレゼントしてるんじゃないの?」
「いや、絶対に違います。
そういう時は恩着せがましく自信満々に渡してくるので、あれは本当にいらない物をこの部屋に置いてきただけですね。」
「確かに癖が強すぎる人だね。」
私が笑うと幸治君も楽しそうに笑い、髪の毛をシャワーで洗い流している。
「もしかして、昔からよく話題に出てくる常連さんってその人?
幸治君のことを好きになった女の子が可哀想だとか言ってきて、あんなに美味しい醤油ラーメンを“これじゃない”とか文句を言いながらもほぼ毎日のように来るっていう人?」
「そうです、その人ですね。
俺はただの煩くて面倒な常連さんだと思ってたんですけど、あの人は俺のことを友達だと思っていたというヤバさで。
だからだったんだと納得はして。
あの人、俺の家も知ってたので普通に押し掛けてきたりもしたんですよね。
店の営業時間が終わった夜とかに普通に押し掛けてきて、俺に夜ご飯を作らせてきたんですけど。」
「昔からその常連さんにはムカッとしてたけど、今聞いてもムカムカしてくる。
その人、何でそんなに幸治君のことを独占しようとしてるの?」
「自分に自信しかないからでしょうね。
そんなことをしても自分なら受け入れられるという自信しかないんでしょうね。
あと・・・」
身体を洗い終わった幸治君がシャワーを止めた。
「人を選んではいますね。
あの人、裏表のある人が大嫌いなので。
店に来た初日から煩くて面倒でヤバい人だったので、あの人の前では俺も普通にしていて。」
「お店で1度くらい会ってみたかった。
そしたら私が“普通”に文句を言いたかったよ。
幸治君に酷いことを沢山言ってきて。」
「あ、それは無理でした。
あの人に会わせないよう、あの人が来店するくらいの時間には羽鳥さんを帰らせてたので。」
幸治君がそんなことを言いながら湯船の方に身体を向けた。
「あの人、マジで芸能人かっていうくらいのイケメンで、しかも外面は恐ろしく良いので。
普通の女の人なら、“中華料理屋 安部”よりもあの人のことを一瞬で好きになるくらいですよ。
そんな羽鳥さんを俺の目の前で見るのは嫌だなと、“普通”以下の男子高校生だった俺は思っていました。」
そんなことを湯船に浸かる私の目の前で言ってきて・・・。
その話もドキドキとするけれど、それ以上に・・・
「あの・・・あんまり見ないようにはしてたのに、こんなに目の前で堂々と幸治君の“いけないトコロ”を見せられても・・・。」
そっちの方にドキドキとして、でも目が離せなくて・・・
「羽鳥さんがいつも見たがるので見たいのかなと思って。
違いました?」
「・・・も~・・・意地悪・・・。」
恥ずかしい気持ちもあるはずなのに、“嬉しい”と・・・“楽しい”と思った。
“中華料理屋 安部”にいた頃のように、それだけを思った。
「ここのお風呂、椅子がないよね。
立ってシャワーを浴びるのが好きなの?」
「俺は特に何の拘りもないんですけど、あの人が風呂場にある椅子に座れないらしくて。
水に濡れたまま放置しておいた椅子に座るとか無理らしいですよ?」
「・・・ねぇ、本当に煩くて面倒でヤバい人じゃない?」
「そうですよ、だから言ってるじゃないですか。
液晶テレビを買ったは良いけど気に入らないと言ってこの部屋に持ってきたり、ソファーを買ったは良いけどソファーはいらなかったとこの部屋に持ってきたり、ベッドもダイニングテーブルもそんな感じで、この部屋の中にある家具家電は全てあの人が増やしていった物です。
あの人は結局古すぎるくらい古い家具家電を使い続けていますね。」
「それ・・・言い訳してるだけで、実は幸治君にプレゼントしてるんじゃないの?」
「いや、絶対に違います。
そういう時は恩着せがましく自信満々に渡してくるので、あれは本当にいらない物をこの部屋に置いてきただけですね。」
「確かに癖が強すぎる人だね。」
私が笑うと幸治君も楽しそうに笑い、髪の毛をシャワーで洗い流している。
「もしかして、昔からよく話題に出てくる常連さんってその人?
幸治君のことを好きになった女の子が可哀想だとか言ってきて、あんなに美味しい醤油ラーメンを“これじゃない”とか文句を言いながらもほぼ毎日のように来るっていう人?」
「そうです、その人ですね。
俺はただの煩くて面倒な常連さんだと思ってたんですけど、あの人は俺のことを友達だと思っていたというヤバさで。
だからだったんだと納得はして。
あの人、俺の家も知ってたので普通に押し掛けてきたりもしたんですよね。
店の営業時間が終わった夜とかに普通に押し掛けてきて、俺に夜ご飯を作らせてきたんですけど。」
「昔からその常連さんにはムカッとしてたけど、今聞いてもムカムカしてくる。
その人、何でそんなに幸治君のことを独占しようとしてるの?」
「自分に自信しかないからでしょうね。
そんなことをしても自分なら受け入れられるという自信しかないんでしょうね。
あと・・・」
身体を洗い終わった幸治君がシャワーを止めた。
「人を選んではいますね。
あの人、裏表のある人が大嫌いなので。
店に来た初日から煩くて面倒でヤバい人だったので、あの人の前では俺も普通にしていて。」
「お店で1度くらい会ってみたかった。
そしたら私が“普通”に文句を言いたかったよ。
幸治君に酷いことを沢山言ってきて。」
「あ、それは無理でした。
あの人に会わせないよう、あの人が来店するくらいの時間には羽鳥さんを帰らせてたので。」
幸治君がそんなことを言いながら湯船の方に身体を向けた。
「あの人、マジで芸能人かっていうくらいのイケメンで、しかも外面は恐ろしく良いので。
普通の女の人なら、“中華料理屋 安部”よりもあの人のことを一瞬で好きになるくらいですよ。
そんな羽鳥さんを俺の目の前で見るのは嫌だなと、“普通”以下の男子高校生だった俺は思っていました。」
そんなことを湯船に浸かる私の目の前で言ってきて・・・。
その話もドキドキとするけれど、それ以上に・・・
「あの・・・あんまり見ないようにはしてたのに、こんなに目の前で堂々と幸治君の“いけないトコロ”を見せられても・・・。」
そっちの方にドキドキとして、でも目が離せなくて・・・
「羽鳥さんがいつも見たがるので見たいのかなと思って。
違いました?」
「・・・も~・・・意地悪・・・。」
恥ずかしい気持ちもあるはずなのに、“嬉しい”と・・・“楽しい”と思った。
“中華料理屋 安部”にいた頃のように、それだけを思った。