仲里鈴音は死んでない✽.。.:*・゚
◆ ◆ ◆

「ここの問題が解けてない人が多かったから気をつけるように。じゃあ、いまのを踏まえて、小テストを配る」

 補講で全科目やってくれるのは助かるけど、まさか、小テストまであるとは思わなかった。

「はぁ、終わったー」

 しんと静まり返った教室の中で誰かが終わりを告げる。
 私も終わった。

 数学の小テストを終えたところで、もう五時を過ぎていた。
 放課後に突入してから一時間半も経っている。

 学校から出て走れば十分くらいで図書館に着くはず。

 そう思っていたのに……

「仲里さん」

 後ろから声を掛けられた。
 落ち着いた大人の女性の声。

 学校カウンセラーの先生だった。

「ちょうど探してたのよ、会えてよかった。少しいい?」
「あの……」

 どう答えようかと思ってしまった。
 用事がある、と言えばよかったかもしれない。
 迷ったことによって、カウンセラーの先生の瞳が光った気がした。

「こっち来て、少し話したいの」

 ニコッと笑った先生が私をカウンセラー室に招く。
 ここで逃げたら、きっとおかしいと思われる。
 両親に何か言われるかもしれない、と考えてしまった。
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