仲里鈴音は死んでない✽.。.:*・゚
「こっち来て」
映画館から外に出ようとしたら、急に顔色を変えた颯馬くんが私の手を引っ張った。
そのままチケット売り場横にある柱の後ろに隠れる。
「どうしたの?」
私には何が起こっているのか全く分からなかった。
怖くなって小声で問いかける。
「死神が私のこと探してる」
颯馬くんのその表情は冗談を言っているようなものではなかった。
本当におびえている顔。
ちらっと柱の向こうを覗いて見ても、人間じゃないモノは見えなかった。
私には見えない何かにお姉ちゃんがおびえている。
「お姉ちゃん……」
急に怖くなってしまった。
私は柱に隠れたまま颯馬くんにすがりついた。
「このままだと未練を残して消えることになる。Aちゃん、小説を完成させて」
颯馬くんにそう言われて、ついにこの時が来てしまったのだと思う。
「でも、完成して、賞を獲ったら、お姉ちゃんは消えちゃうんでしょう? だったら、完成させたくないよ……」
フラれたくないよ、離れたくない。
「行かないでよ、消えないでよ……っ」
涙が止まらない。
「ごめんね、つらい思いさせて。でも、死神が私を探してる。もう消えるまで時間がないの。私のために完成させて、お願い、Aちゃん」
それは切実な願いの声だった。
日々、颯馬くんへの好きの気持ちが募っていく。
でも、この恋心を悟られてしまったらフラれてしまう。
「私、颯馬くんのこと好きじゃない」
涙を拭って、私は颯馬くんを見つめた。
「好きになって」
彼の儚い笑みに、また泣きそうになる。
小説を書ききって賞を獲る。これがお姉ちゃんのやり残したことで、無念に思って成仏できない理由であるのなら……私は成し遂げなければらない。
たとえ、二人が消えてしまうとしても、私は逃げてはならないんだ。
この夏が颯馬くんと過ごす最後になるかもしれない。
映画館から外に出ようとしたら、急に顔色を変えた颯馬くんが私の手を引っ張った。
そのままチケット売り場横にある柱の後ろに隠れる。
「どうしたの?」
私には何が起こっているのか全く分からなかった。
怖くなって小声で問いかける。
「死神が私のこと探してる」
颯馬くんのその表情は冗談を言っているようなものではなかった。
本当におびえている顔。
ちらっと柱の向こうを覗いて見ても、人間じゃないモノは見えなかった。
私には見えない何かにお姉ちゃんがおびえている。
「お姉ちゃん……」
急に怖くなってしまった。
私は柱に隠れたまま颯馬くんにすがりついた。
「このままだと未練を残して消えることになる。Aちゃん、小説を完成させて」
颯馬くんにそう言われて、ついにこの時が来てしまったのだと思う。
「でも、完成して、賞を獲ったら、お姉ちゃんは消えちゃうんでしょう? だったら、完成させたくないよ……」
フラれたくないよ、離れたくない。
「行かないでよ、消えないでよ……っ」
涙が止まらない。
「ごめんね、つらい思いさせて。でも、死神が私を探してる。もう消えるまで時間がないの。私のために完成させて、お願い、Aちゃん」
それは切実な願いの声だった。
日々、颯馬くんへの好きの気持ちが募っていく。
でも、この恋心を悟られてしまったらフラれてしまう。
「私、颯馬くんのこと好きじゃない」
涙を拭って、私は颯馬くんを見つめた。
「好きになって」
彼の儚い笑みに、また泣きそうになる。
小説を書ききって賞を獲る。これがお姉ちゃんのやり残したことで、無念に思って成仏できない理由であるのなら……私は成し遂げなければらない。
たとえ、二人が消えてしまうとしても、私は逃げてはならないんだ。
この夏が颯馬くんと過ごす最後になるかもしれない。