バツイチですが、クールな御曹司に熱情愛で満たされてます!?
来週の週末なら時間が取れそう。ついでにこの近くにある有名なカフェに寄ってみるのもいいかもしれない。
自分で自分の機嫌を取るのも、この二年で上手になった。
画面を眺めていると、急に画面が電話の着信画面に切り替わって驚いた。
「えっ。八神……? あっ!」
一瞬誰だろうかと思ったけれど、すぐに見目麗しい男性の顔が思い浮かんだ。
ハッとして起き上がる。思いがけないことに固まってしまったが、待たせてはいけないと思い、すぐに通話ボタンをタップした。
「もしもし」
《八神です。佐久間さん今お時間大丈夫でしょうか?》
「はい……少し調べ物をしていたのだけなので、大丈夫です」
なぜか、口を滑らせて詳細を話してしまった。
《調べものですか?》
「はい……実はちょっと嫌なことがあって、お祓いでもしてもらおうかなって」
別に隠すような話でもないので、彼に伝えた。
《お祓いというと、神社ですか?》
「はい。って、すみません用件も聞かずにこちらの話をべらべらと」
《いえ、私の方が尋ねたのですから。こちらこそ夜分にすみません。クリーニングができあがったのでその連絡です》
「ありがとうございます」
忙しそうなのに、八神さん自身が連絡をくれたようだ。
《会社の方へお持ちします。ご都合がよろしい日を教えてください》
わざわざ持ってきてくれるというのか。
「さすがに申し訳ないです。今週は大阪へ出張なのでフロントにでも預けてもらっていれば戻り次第取りに行きますので」
《そうですか。では、ある程度の日程がわかればご連絡ください》
きっとフロントの人に伝言をするためだろう。
「はい。ご丁寧にありがとうございます」
思わず電話口で頭を下げた。
《いえ、ただ先ほどおっしゃっていた〝嫌なこと〟が先日のうちのホテルでのトラブルではないかと少し心配しています》
どうやら誤解をさせてしまったようで、慌てて否定する。
「違いますから! 確かにちょっとした事件でしたけど結果的にはいい一日になったので、気にしないでください」
《それを聞いて安心しました。大阪出張ですか、大阪にもグランオクト大阪がありますので、よろしければご滞在ください》
確かにグランドオクトホテルの系列は国内外問わずさまざまな都市にあるが、どこもラグジュアリーな空間を提供する五つ星を獲得している高級ホテルだ。
一社員の出張に気軽に泊まれるわけなどない。
「それはいいですね!って言いたいですけど、経理担当に怒られそうです」
《ははは、それは残念だな。では次は私が大阪にいる際にはぜひ。それならば経費は関係ありませんから》
「社割とかあるんですね。いいなぁ」
《社割……? あはは、そうですね。佐久間さんと一緒に過ごせるなら大幅に値引きしてもらいます》
「じゃあ、期待しておきますね」
社交辞令だとわかっていても、八神さんとのやり取りは楽しくて沈んでいた気持ちが浮上した。
《では、出張お気を付けて》
「はい、ありがとうございます」
電話を切った後、ベッドにぱたんと倒れ込んだ。
ほんの数分の世間話。それでも先ほどまでどんよりとしていた気持ちが、軽くなっている。
八神さんが聞き上手だから?
話の間を取るのがすごくうまい気がする。一流のホテルマンの彼のホスピタリティからは学ぶことが多い。
午後からずっと後ろ向きな気持ちになっていたけれど、元気が出てきた。
二年前の私とは違う。きっと大丈夫だ。
私は気持ちを新たに、明日に備えて早めに眠ることにした。
ベッドに入って目をつむるとなぜだか八神さんの顔が思い浮かんだ。
昼間の熱気の名残が残る午後七時。
立派な平屋の門扉の前でインターフォンを押す。
手入れは行き届いているが年季が入った純和風の家なのに、インターフォンや監視カメラ、警備システムなどはしっかりしている。
きっとご家族が環さんの独り暮らしを心配して設置したんだろうな。
「はーい、今開けるわね。いつも通り入ってきてちょうだい」
インターフォンを通して聞いた環さんの声が明るくてホッとする。
電子錠が解錠される音が響いて、中に入る。
「こんばんはー」
玄関で声をかけると、環さんが顔を出した。
「いらっしゃい。あらスーツ姿なのね。カッコいいわ」
「いえ、くたびれた姿ですみません」
大阪からの出張帰り。東京駅から直接ここにやってきた。
今の私はどこからどう見ても疲れているだろう。新幹線では変な体制で爆睡していたので、体が少し痛い。
「お仕事頑張っているのね。さぁ、中に入って」
「いいえ。今日はお土産を渡しに来ただけだから。どうぞ」
「あら、肉まん?」
自分で自分の機嫌を取るのも、この二年で上手になった。
画面を眺めていると、急に画面が電話の着信画面に切り替わって驚いた。
「えっ。八神……? あっ!」
一瞬誰だろうかと思ったけれど、すぐに見目麗しい男性の顔が思い浮かんだ。
ハッとして起き上がる。思いがけないことに固まってしまったが、待たせてはいけないと思い、すぐに通話ボタンをタップした。
「もしもし」
《八神です。佐久間さん今お時間大丈夫でしょうか?》
「はい……少し調べ物をしていたのだけなので、大丈夫です」
なぜか、口を滑らせて詳細を話してしまった。
《調べものですか?》
「はい……実はちょっと嫌なことがあって、お祓いでもしてもらおうかなって」
別に隠すような話でもないので、彼に伝えた。
《お祓いというと、神社ですか?》
「はい。って、すみません用件も聞かずにこちらの話をべらべらと」
《いえ、私の方が尋ねたのですから。こちらこそ夜分にすみません。クリーニングができあがったのでその連絡です》
「ありがとうございます」
忙しそうなのに、八神さん自身が連絡をくれたようだ。
《会社の方へお持ちします。ご都合がよろしい日を教えてください》
わざわざ持ってきてくれるというのか。
「さすがに申し訳ないです。今週は大阪へ出張なのでフロントにでも預けてもらっていれば戻り次第取りに行きますので」
《そうですか。では、ある程度の日程がわかればご連絡ください》
きっとフロントの人に伝言をするためだろう。
「はい。ご丁寧にありがとうございます」
思わず電話口で頭を下げた。
《いえ、ただ先ほどおっしゃっていた〝嫌なこと〟が先日のうちのホテルでのトラブルではないかと少し心配しています》
どうやら誤解をさせてしまったようで、慌てて否定する。
「違いますから! 確かにちょっとした事件でしたけど結果的にはいい一日になったので、気にしないでください」
《それを聞いて安心しました。大阪出張ですか、大阪にもグランオクト大阪がありますので、よろしければご滞在ください》
確かにグランドオクトホテルの系列は国内外問わずさまざまな都市にあるが、どこもラグジュアリーな空間を提供する五つ星を獲得している高級ホテルだ。
一社員の出張に気軽に泊まれるわけなどない。
「それはいいですね!って言いたいですけど、経理担当に怒られそうです」
《ははは、それは残念だな。では次は私が大阪にいる際にはぜひ。それならば経費は関係ありませんから》
「社割とかあるんですね。いいなぁ」
《社割……? あはは、そうですね。佐久間さんと一緒に過ごせるなら大幅に値引きしてもらいます》
「じゃあ、期待しておきますね」
社交辞令だとわかっていても、八神さんとのやり取りは楽しくて沈んでいた気持ちが浮上した。
《では、出張お気を付けて》
「はい、ありがとうございます」
電話を切った後、ベッドにぱたんと倒れ込んだ。
ほんの数分の世間話。それでも先ほどまでどんよりとしていた気持ちが、軽くなっている。
八神さんが聞き上手だから?
話の間を取るのがすごくうまい気がする。一流のホテルマンの彼のホスピタリティからは学ぶことが多い。
午後からずっと後ろ向きな気持ちになっていたけれど、元気が出てきた。
二年前の私とは違う。きっと大丈夫だ。
私は気持ちを新たに、明日に備えて早めに眠ることにした。
ベッドに入って目をつむるとなぜだか八神さんの顔が思い浮かんだ。
昼間の熱気の名残が残る午後七時。
立派な平屋の門扉の前でインターフォンを押す。
手入れは行き届いているが年季が入った純和風の家なのに、インターフォンや監視カメラ、警備システムなどはしっかりしている。
きっとご家族が環さんの独り暮らしを心配して設置したんだろうな。
「はーい、今開けるわね。いつも通り入ってきてちょうだい」
インターフォンを通して聞いた環さんの声が明るくてホッとする。
電子錠が解錠される音が響いて、中に入る。
「こんばんはー」
玄関で声をかけると、環さんが顔を出した。
「いらっしゃい。あらスーツ姿なのね。カッコいいわ」
「いえ、くたびれた姿ですみません」
大阪からの出張帰り。東京駅から直接ここにやってきた。
今の私はどこからどう見ても疲れているだろう。新幹線では変な体制で爆睡していたので、体が少し痛い。
「お仕事頑張っているのね。さぁ、中に入って」
「いいえ。今日はお土産を渡しに来ただけだから。どうぞ」
「あら、肉まん?」