バツイチですが、クールな御曹司に熱情愛で満たされてます!?
「ありがとう。手元にあるのを二、三日で飲み切りそうだったの」
先ほどホテルで手に入れた紅茶を渡す。環さんも私と一緒であのホテルオリジナルの紅茶が好きなのだ。
「それとこれ。この間言っていたお団子です。出来立ての今が美味しいんですけど、今食べたら夕食に差し支えますか?」
柔らかいうちが美味しいのだが、予定が狂ってここに来るのが遅くなってしまった。おやつの時間はとっくに過ぎてしまっている。
「その時はその時よ。せっかくだし伊都ちゃんと一緒に食べたいわ。ひとりだと美味しさも半減だもの」
おちゃめにニコッと笑った環さんが立ち上がろうとしたので、それを制して私が立った。
「お茶とお皿ですよね? 私が用意します。いつものところでよかったですか?」
「悪いわね、お願いするわ」
環さんはお歳にしては元気に過ごしているが、足が時々痛むようだ。ここに来た時はいろいろお手伝いをするようにしているので、普段使うものの置き場所は把握している。
お皿とウェットティッシュ、それと環さんの分のお茶を持って戻る。
「みたらし団子って美味しいけど、手がべとべとになるのが玉に瑕ですよね」
「そうよね。でもそれを我慢しても食べる価値があるのでしょう?」
「もちろんです。この間お客さんにいただいて、絶対環さんと一緒に食べたいって思ってたんですよ。どうぞ」
串に刺さったお団子を、お皿にのせて環さんに差し出す。
「あらあら、美味しそうだわ」
女ふたりでの小さなお茶会の始まりだった。
「あら、本当に惜しい。お団子は柔らかいし、それにこのみたらしのたれが絶品ね」
「ですよね? よかったー!」
環さんが食べて感想を言うのを待ってから、私もお団子に手を伸ばした。
美味しそうに顔をほころばせているのを見て、私もうれしくなる。
実は午後からお茶やお菓子を食べ続けているので、お腹は空いていないのだけれど、美味しいものは別腹だ。
「ん~幸せ」
「ね~」
歳が離れているけれど、不思議と気が合ってこうやって仲よくしている。
偶然の出会いがもたらした幸運だ。
もともとおばあちゃんっ子だったせいか、この家に来て環さんとゆっくり過ごす時間は私にとって安らぎのひとときなのだ。
環さんとの出会いはちょうど一年前のこのくらいの時季だった。
去年も今年とたがわずなかなかの猛暑だった。そんな中、たまたま雨の降った日。
私はたまたまこの近くの取引先にからの帰りに、雨の中で困っている環さんを見つけたのだ。
『大丈夫ですか?』
私が声をかけると、環さんは少し驚いた表情で顔をこちらに向けた。そして困ったように眉尻を下げる。
『ええ、こんな道の真ん中でお邪魔よね。ごめんなさい』
申し訳なさそうにしている姿を見ると、放っておけない。
『いえ、お困りでしたなにか手伝いましょうか?』
『実は――』
どうやら草履の鼻緒が切れ、その時に足をわずかに痛めてしまい歩けなくなったようだ。
自宅近くなのでタクシーに乗るほどでもないと悩んで立っていたらしい。
『わかりました。はい、どうぞ』
私は環さんの前に背中を見せてかがんだ。
『近くなんですよね? おぶっていきます』
『いいえ、そんな……悪いわ』
『遠慮しないでください。私こう見えても力持ちなので』
どんと胸をたたいて見せると、環さんはくすくすと笑った。
『じゃあお言葉に甘えて、肩を貸してもらおうかしら。家は本当にすぐそこなの』
指をさした先には、一軒の平屋がある。
『では、ゆっくり歩いていきましょう』
『悪いわね。ありがとう』
申し訳なさそうにほほ笑んだ環さんを支えて、自宅に連れて帰る。
送り届けた後はすぐに帰るつもりだったのに、タオルを貸すから中に入れと言われ、お言葉に甘えて玄関でタオルを借りることになる。
その時に体が冷えるといけないからと、環さんが紅茶を出してくれた。
ひとくち飲んで驚いた。この香りと味は――。
『これってグランドオクト東京のものですよね? 私もここの紅茶大好きなんです。美味しいですよね』
『あらご存じなの? 実は亡くなった主人とよく飲んだのよ。それで今も時々買いに行っていたんだけど、なかなか遠くてね』
先ほど見ていたら、少し膝も痛そうにしていた。雨だととくに痛むのだろう。
独り暮らしで、遠出するのも大変だと言う。
ここでも私のおせっかいが出てしまう。
『もしよければ私が買ってきましょうか? 実は私もそこの紅茶のファンで月に一度以上はラウンジに行くので』
『本当? 助かるわ。年取るとそんなに頻繁には行けないから』
『私の名刺を渡しておきますね。電話番号はこっちの個人の携帯の方へ連絡ください』
先ほどホテルで手に入れた紅茶を渡す。環さんも私と一緒であのホテルオリジナルの紅茶が好きなのだ。
「それとこれ。この間言っていたお団子です。出来立ての今が美味しいんですけど、今食べたら夕食に差し支えますか?」
柔らかいうちが美味しいのだが、予定が狂ってここに来るのが遅くなってしまった。おやつの時間はとっくに過ぎてしまっている。
「その時はその時よ。せっかくだし伊都ちゃんと一緒に食べたいわ。ひとりだと美味しさも半減だもの」
おちゃめにニコッと笑った環さんが立ち上がろうとしたので、それを制して私が立った。
「お茶とお皿ですよね? 私が用意します。いつものところでよかったですか?」
「悪いわね、お願いするわ」
環さんはお歳にしては元気に過ごしているが、足が時々痛むようだ。ここに来た時はいろいろお手伝いをするようにしているので、普段使うものの置き場所は把握している。
お皿とウェットティッシュ、それと環さんの分のお茶を持って戻る。
「みたらし団子って美味しいけど、手がべとべとになるのが玉に瑕ですよね」
「そうよね。でもそれを我慢しても食べる価値があるのでしょう?」
「もちろんです。この間お客さんにいただいて、絶対環さんと一緒に食べたいって思ってたんですよ。どうぞ」
串に刺さったお団子を、お皿にのせて環さんに差し出す。
「あらあら、美味しそうだわ」
女ふたりでの小さなお茶会の始まりだった。
「あら、本当に惜しい。お団子は柔らかいし、それにこのみたらしのたれが絶品ね」
「ですよね? よかったー!」
環さんが食べて感想を言うのを待ってから、私もお団子に手を伸ばした。
美味しそうに顔をほころばせているのを見て、私もうれしくなる。
実は午後からお茶やお菓子を食べ続けているので、お腹は空いていないのだけれど、美味しいものは別腹だ。
「ん~幸せ」
「ね~」
歳が離れているけれど、不思議と気が合ってこうやって仲よくしている。
偶然の出会いがもたらした幸運だ。
もともとおばあちゃんっ子だったせいか、この家に来て環さんとゆっくり過ごす時間は私にとって安らぎのひとときなのだ。
環さんとの出会いはちょうど一年前のこのくらいの時季だった。
去年も今年とたがわずなかなかの猛暑だった。そんな中、たまたま雨の降った日。
私はたまたまこの近くの取引先にからの帰りに、雨の中で困っている環さんを見つけたのだ。
『大丈夫ですか?』
私が声をかけると、環さんは少し驚いた表情で顔をこちらに向けた。そして困ったように眉尻を下げる。
『ええ、こんな道の真ん中でお邪魔よね。ごめんなさい』
申し訳なさそうにしている姿を見ると、放っておけない。
『いえ、お困りでしたなにか手伝いましょうか?』
『実は――』
どうやら草履の鼻緒が切れ、その時に足をわずかに痛めてしまい歩けなくなったようだ。
自宅近くなのでタクシーに乗るほどでもないと悩んで立っていたらしい。
『わかりました。はい、どうぞ』
私は環さんの前に背中を見せてかがんだ。
『近くなんですよね? おぶっていきます』
『いいえ、そんな……悪いわ』
『遠慮しないでください。私こう見えても力持ちなので』
どんと胸をたたいて見せると、環さんはくすくすと笑った。
『じゃあお言葉に甘えて、肩を貸してもらおうかしら。家は本当にすぐそこなの』
指をさした先には、一軒の平屋がある。
『では、ゆっくり歩いていきましょう』
『悪いわね。ありがとう』
申し訳なさそうにほほ笑んだ環さんを支えて、自宅に連れて帰る。
送り届けた後はすぐに帰るつもりだったのに、タオルを貸すから中に入れと言われ、お言葉に甘えて玄関でタオルを借りることになる。
その時に体が冷えるといけないからと、環さんが紅茶を出してくれた。
ひとくち飲んで驚いた。この香りと味は――。
『これってグランドオクト東京のものですよね? 私もここの紅茶大好きなんです。美味しいですよね』
『あらご存じなの? 実は亡くなった主人とよく飲んだのよ。それで今も時々買いに行っていたんだけど、なかなか遠くてね』
先ほど見ていたら、少し膝も痛そうにしていた。雨だととくに痛むのだろう。
独り暮らしで、遠出するのも大変だと言う。
ここでも私のおせっかいが出てしまう。
『もしよければ私が買ってきましょうか? 実は私もそこの紅茶のファンで月に一度以上はラウンジに行くので』
『本当? 助かるわ。年取るとそんなに頻繁には行けないから』
『私の名刺を渡しておきますね。電話番号はこっちの個人の携帯の方へ連絡ください』