クールで人気者の宇佐美くんは、私の前でだけデレが全開になります。
「夏目さん、これ見て」
宇佐美くんはリュックサックから自分のペンケースを取り出して、私に見せてくれる。
「あ、にゃー美ちゃん……!」
「うん。夏目さんとおそろいにしてみた」
これはクレーンゲームで宇佐美くんが獲っていたストラップだ。
宇佐美くんは、私のペンケースにぶら下がっているにゃー助くんのストラップと見比べて、優しく微笑んでいる。
――何でだろう。宇佐美くんの口からこぼれた“おそろい”の言葉に、胸の辺りがソワソワして、落ち着かなくなる。
「正直、この猫のことはよく分からないけど……でも、夏目さんと一緒だと思うと、嬉しい」
「うぇっ……えっと、その……ありがとう?」
「ふっ、何でお礼?」
宇佐美くんが、可笑しそうに目を細めて笑う。
――最近の宇佐美くんは、こんな風に、よく笑顔を見せてくれるようになった。
私はこの表情を直視するたびに、何だか、堪らない気持ちでいっぱいになってしまう。
胸がきゅうって締め付けられるように苦しくて、でも、嫌じゃなくて。
それに、自分でもびっくりしちゃうくらい心臓が大きな音を立てるから、宇佐美くんにまで聴こえちゃうんじゃないかって心配になって、それを誤魔化すのに必死になっちゃうんだよね。