クールで人気者の宇佐美くんは、私の前でだけデレが全開になります。
「夏目さん?」
「……宇佐美、くん」
そこにいたのは夏美ちゃんではなく、宇佐美くんだった。
部活を終えてすぐにここにきたのだろう、体操着に身を包んだままの姿だ。
「どうして宇佐美くんが、ここに?」
「俺は、猫宮さんが話があるって待ってるから、今すぐ体育館裏に行けって……夏美に言われてきたんだ」
「夏美ちゃんが……?」
宇佐美くんに話があるらしいつっこちゃんとは、ついさっき別れたばかりだ。
つっこちゃんは真っ直ぐ家に帰ったはず。つまり、つっこちゃんが今ここに姿を現す可能性は、ほぼないっていうことで。
「夏目さんは、どうしてここに?」
「えっと、私は夏美ちゃんに呼ばれてここにきたんだけど……」
その夏美ちゃんの姿は、やっぱりどこにも見当たらない。
二人の間に、シンと気まずい静けさが漂う。