クールで人気者の宇佐美くんは、私の前でだけデレが全開になります。
「……はぁー、はいはい。お熱いことで」
「ふふ、小夜ちゃんってばリンゴみたいでかわいい~」
呆れ顔のつっこちゃんとニマニマ笑っている夏美ちゃんから、同時に生温いまなざしを向けられてしまい、耐えられなくなった私は顔を両手で覆い隠す。
そんな私を、宇佐美くんが後ろから抱きしめてきた。
「ちょっ、宇佐美くん!? つっこちゃんたちがいるのに……!」
「何で? この二人がいたら、くっついちゃだめなの?」
「俺はいつでも夏目さんにくっついていたいんだけど」なんて甘い台詞を耳元でサラッと吐き出した宇佐美くんは、慌てふためく私に気づいていながら、腕の力をますます強める。
「はぁ、仕方ない。それじゃあ今日のところは、私たちは退散しますかね」
「ふふ、そうだね。後はお二人でごゆっくり~」
「えっ、二人とも待って……!」
私の制止の声も虚しく、二人は手を振りながら教室を出て行ってしまった。
賑やかな空間から一変、取り残された私と宇佐美くんの間に沈黙が流れる。