クールで人気者の宇佐美くんは、私の前でだけデレが全開になります。

エピローグ


進学に向けて、個人の学習能力に応じたカリキュラムに、部活動にも力を入れ、節度を持った学校生活がどうたらこうたら……。


体育館では、現在進行形で入学式が行われていた。壇上で話す校長の話が、遥翔の耳をすり抜けていく。

内容がどこか薄っぺらく感じる長い話を気だるげな顔で聞いていた遥翔だったが、右隣から聞こえてきた小さな声に、意識をそちらに向けた。


「……先生の話、長いよね」


肩下まで伸びている長い黒髪に、ぱっちりとしたまあるい瞳。背は周囲にいる他の女子よりも低くて、背の高い遥翔からしたら一際小さく見えた。


「私、夏目小夜っていいます。これからよろしくね」

「……」


ニッコリと笑うその顔は、毒気を抜かれてしまうほどに柔らかく、朗らかだ。

返事を返さない遥翔を気にすることなく、小夜は再び前を向き、壇上で話し続けている校長に視線を向けた。


けれど遥翔は、何故か隣にいる少女から目が離せなかった。

灰色の世界に、パッと色がついたような感覚。

今まで感じたことのない、胸が軋むような感覚。


キュッと痛む胸に手を添えながら、遥翔は内心で首をかしげる。


(何だこれ……心臓が痛い)


わからない。わからないし、苦しいけど……嫌じゃない。

もう一度、右隣に座っている小夜を見れば、また小さく胸が高鳴る。


遥翔の心に、初恋という名の小さな種がまかれ――それが芽吹き始めた瞬間だった。

< 168 / 168 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:40

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
  • 書籍化作品
[原題]二度目の恋は、甘く切なく溺れるほどに

総文字数/90,922

恋愛(純愛)143ページ

表紙を見る
懐妊一夜~赤ちゃんを宿したら極上御曹司の盲愛が止まりません~
  • 書籍化作品
[原題]星降る夜に天の川で、甘くとろけるキスをして

総文字数/60,315

恋愛(オフィスラブ)140ページ

表紙を見る
俺の妻に手を出すな~離婚前提なのに、御曹司の独占愛が爆発して~
  • 書籍化作品
表紙を見る

この作品をシェア

pagetop