クールで人気者の宇佐美くんは、私の前でだけデレが全開になります。
「……行っちゃった」
「あー……小夜、私も一緒にいよっか?」
「……ううん、大丈夫だよ。つっこちゃんは先にお風呂に入ってて」
この学校には、小さめだけど大浴場がある。大人が余裕で十人は入れるんじゃないだろうか。
男子の部員数は二十人近くいるから多少狭いかもしれないけど、今回参加している女子は五人だけだから、お風呂では広々とくつろげるだろう。
「ん、分かった。それじゃあお風呂に行く準備して部屋で待ってるから」
つっこちゃんは水に濡れた手をタオルで拭くと、私の頭をポンと撫でて調理室を後にした。
私は調理室の隅に置かれていたスツールに腰掛けて、藤崎さんが戻ってくるのをソワソワしながら待つ。
「ごめんね、待たせちゃって……!」
待つこと五分ほどして、息を切らした藤崎さんが戻ってきた。急いで走ってきてくれたんだろう。
「ううん、大丈夫だよ」
もう一つ用意しておいたスツールに座るよう藤崎さんに促して、ドキドキと小さく鳴っている心臓を掌でそっと押さえつけながら、話を切り出した。