クールで人気者の宇佐美くんは、私の前でだけデレが全開になります。
「夏目さん、付き添いで連れてく」
「……はぁ? おいコラ遥翔、オマエ何言って……」
部長の制止の声を無視してズンズンと歩みを進める宇佐美くんと、半ば強引に手首を掴まれたまま引きずられている私。
助けを求めるべく振り返れば、目が合った夏美ちゃんは何故かにやけていて、ヒラヒラと手を振っている。
――夏美ちゃん、絶対にまた勘違いしてるよね。
後で誤解を解かなければと考えながら、私は成す術なく腕を引かれて、体育館の外に足を踏みだしてしまった。
「……夏目さん、一緒にきて」
廊下に出て周りに人がいなくなったところでそっと手を離した宇佐美くんは、クルリと私に向き合って今更にも思えるお願いをしてくる。
「うん、それはいいけど……」
――できたらそれは、体育館から連れだす前に確認してほしかったかな。
そんな要望はもちろん口には出せないまま、歩き出した宇佐美くんの後を追いかける。