クールで人気者の宇佐美くんは、私の前でだけデレが全開になります。
「よければ俺のこと、名前で呼んでみてよ」
「名前でって……ど、どうして?」
「名前呼びの方が、仲良しな感じがするかなって。……だめ、かな?」
しゅんと眉を下げた蓮見くんに、子犬のような目で見つめられる。
――うぅっ、そんな不安そうな目で見られると、何だか悪いことをしているような気持ちになっちゃうよ。
「は、恥ずかしいから、一回だけでもいい?」
「はは、うん。それでもいいよ」
「それじゃあ、えっと……凪沙くん?」
男の子のことを下の名前で呼ぶ機会なんて、中学校に上がってからは中々なかったから、ちょっとだけ緊張しちゃう。
だけど、一回くらいなら呼んでみてもいいかなぁって、そっと声に出してみた。