クールで人気者の宇佐美くんは、私の前でだけデレが全開になります。
「実は、ちょっとだけバス酔いしちゃったみたいなんだよね」
「そうだったんですね。私も車酔いしやすいのでわかりますけど、辛いですよね」
「うん。俺さ、あんまり顔に出にくいタイプなんだけど……よく分かったね」
水を数口飲んで、ふぅっと息を吐いた男の子は、石段になっている部分に腰を下ろした。そして、隣を手でトントンとたたく仕草をする。
多分、座れってことだよね……?
少しだけならいいかなと思い、人ひとり分座れる距離を空けて、私も腰を下ろした。
「俺は大賀美礼央っていうんだ。君の名前を聞いてもいいかな?」
「あ、私は夏目小夜っていいます」
「小夜ちゃんか。かわいい名前だね」
「えっ、と、ありがとうございます……?」
立てた片足に頬杖をついてニコニコ笑っている大賀美くんは、何だか、とっても機嫌が良さそうだ。
ついさっきまで、蒼白い顔をしていたのに。