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すると綿貫は一転笑みを浮かべ、渚の両肩をその両手でぽんぽんと二回叩いた。

「そうだな!岡咲、お前はよくやってる。ベテランやエリート揃いの男子社員を差し置いて、毎月営業成績ナンバーワンを死守。並大抵な努力では達成できない成績だ。そこは私も大いに買っている。でもな岡咲、あまり気が強いと・・・男が逃げてくぞ?」

「は?」

「岡咲は美人なんだから口を慎めばすぐに恋人が出来る、と俺は思うんだがなあ。花の命は短いって言うだろ?お前もそろそろ本気で婚活したらどうだ?なんなら結婚相談所紹介してやろうか?それに結婚はいつでも出来るかもしれないが、出産のタイムリミットは案外早いぞ?高齢出産はリスクが大きいっていうし。まあ頑張ってくれたまえ。」

渚は両肩に置かれた綿貫の手を蹴散らすように振り払った。

「それセクハラですけど?出るとこ出ましょうか?私、負けませんから!」

そう低い声で睨みを効かす渚を前に、綿貫は両手を挙げてアメリカ人のようなポーズを取った。

「おお怖い。最近の女はちょっと助言するとやれセクハラだ、マタハラだ、パワハラだってうるさいのなんの。世知辛い世の中になったもんだ。さてさて退散するか。」

そう声を張り上げ、綿貫は自席へ戻っていった。

渚はそのはち切れそうな綿貫の背中に向かって大きくイーッと顔をしかめてみせた。

「あのエロ親父・・・不倫がばれて奥さんと一悶着起こせばいいのに。美々、あのセクハラお洒落メガネダヌキに負けちゃ駄目よ!」

「渚先輩・・・ありがとうございますう」

美々は渚の手を握り、大きく振った。

「でも先輩も私の体型のこと、けっこう口出ししてましたけどお?」

「私は愛ある忠告だからいいの!そんなことより」

渚は美々に顔を寄せ、小声で囁いた。

「で・・・彼氏が出来たってホントなの?」

「はい!渚先輩にそんなこと嘘つきませんて。」

「その話、あとで詳しく。」

「了解です!」

その後二人は自席に戻り、何事もなかったかのようにパソコンに向かい仕事を始めた。
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