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渚、本当の気持ちを隠す
一週間後。
渚は大事な話があるからと言って、湊を居酒屋「はな」へ呼び出した。
渚がひとりでビールを飲んでいると、遅れて湊が店に入って来た。
今日もグレーのスーツに黒いネクタイが良く似合っている。
渚は初めて会ったときのように、湊にときめいている自分に気づいた。
けれどそんな気持ちとは裏腹に、これから湊に話さなければならないことを思うとどうしようもなく心が沈んだ。
「久しぶりだな。」
湊は上機嫌な様子で渚の前の席に座った。
「久しぶり。急に誘っちゃってごめんなさい。」
「いや・・・俺も渚に会いたいと思っていたから丁度良かった。報告したいこともあるし。」
お手拭きで顔を拭き、生ビールを注文すると、湊はすでにジョッキのビールが減っている渚に苦笑した。
「お前な・・・乾杯する前に飲むなよ。」
「いいじゃない。時間は有限なの。待っている時間がもったいないもの。」
「俺と一緒に祝杯をあげようとは思わないのか?」
「はいはい。じゃあ待ってます。」
「もう遅いわ。」
そう言いつつも、湊の顔は喜びに満ち溢れていた。