転生したら竜の花嫁⁉ ~雨乞いの生贄にされた私を捨てられた女なら丁度良いと竜が拾いに来ました~
貴女は私の番
本屋で換金を終え、私たちは中央区から西区へと向かっていた。
「ねぇ、レフィー」
「何でしょう?」
「かなりの高確率で女性がレフィーを振り返ってる……」
打率九割行ってやしませんか? 二度見三度見の人までいるのですが。
おかしい。私の漫画を実践中なのは、レフィーだけのはずなのに。野生のエキストラが多過ぎる件について。
「あと低確率だけど、私が睨まれてる……」
目を合わせてはいけないし、レフィーにチクっているのを勘付かれるのも怖い。私は街並みを眺める振りをして、こっそり言った。
それを受けて、レフィーが直近で睨みを利かせていった女性を一瞥する。
「あれはミアが睨まれているというのとは、少し違うと思いますよ」
本当に一瞥くれただけで、レフィーは直ぐさま進行方向に目を戻した。
「多くの人間にとって他人への関心は、『あの人と比べて自分はどうか?』に集約されます。先程の女性もおそらくその例に漏れないでしょう。彼女にとって、『ミアより自分は魅力的かどうか』という問いは、『バスタブの猫足より自分の足は美しいか』と同レベル。どうでもいい。気にするだけ無駄ですね」
「ズバッと言ったね」
「それから今の私は人間の姿なので、振り返るのが人間の女なのは当然です」
「ズバッと言ったね!」
いやまあ実際、その潔さも含めて素敵ですけどね、貴方。
「って、あれ? 今の言い方だと、竜のときは竜な女性がレフィーを振り返っていたのよね? 竜は番にしか興味を示さないんじゃなかったの?」
麻理枝先輩から聞いていた話だと、確かそんな設定だったはず。「本能レベルで唯一」というのが、竜の愛し方だとかどうとか。
「興味の種類によりますね。欲情という点では、ミアが言うように番にしか惹かれません。ですが、竜は基本的に美しいものが好きなので。コレクションとして同族を欲しがる者も、います」
「コレクションとな……」
それ、人間で例えるなら、人間をコレクションとして集めているという話になるのでは。
……ん? 待って、ある。あるわ。成金親父が美女侍らせるとか、普通にあるわ。何てこと、シュールな世界は割と身近にあったのだ……。
「そっか。他に欲情はしないから、番が唯一なの――ね?」
得心いった。そう話題を締め括ろうとして、ふとその直前のレフィーの台詞が頭を過る。
「番には欲情という意味で、関心がある」
「そうですね」
「私はレフィーの……番」
「そうですね」
と、いうことはですよ?
「……してるの? 欲情」
まったくそう見えませんけど。
「してますよ」
「してるの⁉」
まったくそう見えませんけど!
「いやだって、レフィーが私を迎えにきたのって、偶然よね?」
今年旱魃になったことも、ましてやその生け贄に私が選ばれたことも、レフィーは知りようがないはず。
「偶然ですが、必然です」
「どっち⁉」
それ対義語ですし!
「以前、過去に人間を番とした竜の話を耳にしたのですが、その方は白い結婚をされていたようで。私はそのときに、『そんな稀な状況にありながら、異種族間での繁殖を試さないとは勿体ない。これはもう、私が自分で実行するしかない』そう思ったんですよ。そう思い立ったということは、その時点で私の番が人間だということになります。番以外とは、子を成せないわけですから」
「あ。あー……なるほどね」
「シクル村の風習は随分前から知っていました。でもそのときは、単なる知識でしかなかった。ところが今回の旱魃に限って、生け贄の人間が欲しいと思った……そう、勘が働いた」
レフィーが空いている方の手で、自身の顎を一撫でする。
「状況的に見て、番は貴女で間違いないと確信しました」
でもって顎に手をやったままのレフィーに、「容疑者はお前だ」的な言い回しで言われる。恋の始まりを尋ねたはずが、気が付いたら推理を聞かされていた。
「レフィーは女性をコレクションしたいとかは……」
「私は本があればいいです」
うーん。清々しいほどの即答だ!
「ねぇ、レフィー」
「何でしょう?」
「かなりの高確率で女性がレフィーを振り返ってる……」
打率九割行ってやしませんか? 二度見三度見の人までいるのですが。
おかしい。私の漫画を実践中なのは、レフィーだけのはずなのに。野生のエキストラが多過ぎる件について。
「あと低確率だけど、私が睨まれてる……」
目を合わせてはいけないし、レフィーにチクっているのを勘付かれるのも怖い。私は街並みを眺める振りをして、こっそり言った。
それを受けて、レフィーが直近で睨みを利かせていった女性を一瞥する。
「あれはミアが睨まれているというのとは、少し違うと思いますよ」
本当に一瞥くれただけで、レフィーは直ぐさま進行方向に目を戻した。
「多くの人間にとって他人への関心は、『あの人と比べて自分はどうか?』に集約されます。先程の女性もおそらくその例に漏れないでしょう。彼女にとって、『ミアより自分は魅力的かどうか』という問いは、『バスタブの猫足より自分の足は美しいか』と同レベル。どうでもいい。気にするだけ無駄ですね」
「ズバッと言ったね」
「それから今の私は人間の姿なので、振り返るのが人間の女なのは当然です」
「ズバッと言ったね!」
いやまあ実際、その潔さも含めて素敵ですけどね、貴方。
「って、あれ? 今の言い方だと、竜のときは竜な女性がレフィーを振り返っていたのよね? 竜は番にしか興味を示さないんじゃなかったの?」
麻理枝先輩から聞いていた話だと、確かそんな設定だったはず。「本能レベルで唯一」というのが、竜の愛し方だとかどうとか。
「興味の種類によりますね。欲情という点では、ミアが言うように番にしか惹かれません。ですが、竜は基本的に美しいものが好きなので。コレクションとして同族を欲しがる者も、います」
「コレクションとな……」
それ、人間で例えるなら、人間をコレクションとして集めているという話になるのでは。
……ん? 待って、ある。あるわ。成金親父が美女侍らせるとか、普通にあるわ。何てこと、シュールな世界は割と身近にあったのだ……。
「そっか。他に欲情はしないから、番が唯一なの――ね?」
得心いった。そう話題を締め括ろうとして、ふとその直前のレフィーの台詞が頭を過る。
「番には欲情という意味で、関心がある」
「そうですね」
「私はレフィーの……番」
「そうですね」
と、いうことはですよ?
「……してるの? 欲情」
まったくそう見えませんけど。
「してますよ」
「してるの⁉」
まったくそう見えませんけど!
「いやだって、レフィーが私を迎えにきたのって、偶然よね?」
今年旱魃になったことも、ましてやその生け贄に私が選ばれたことも、レフィーは知りようがないはず。
「偶然ですが、必然です」
「どっち⁉」
それ対義語ですし!
「以前、過去に人間を番とした竜の話を耳にしたのですが、その方は白い結婚をされていたようで。私はそのときに、『そんな稀な状況にありながら、異種族間での繁殖を試さないとは勿体ない。これはもう、私が自分で実行するしかない』そう思ったんですよ。そう思い立ったということは、その時点で私の番が人間だということになります。番以外とは、子を成せないわけですから」
「あ。あー……なるほどね」
「シクル村の風習は随分前から知っていました。でもそのときは、単なる知識でしかなかった。ところが今回の旱魃に限って、生け贄の人間が欲しいと思った……そう、勘が働いた」
レフィーが空いている方の手で、自身の顎を一撫でする。
「状況的に見て、番は貴女で間違いないと確信しました」
でもって顎に手をやったままのレフィーに、「容疑者はお前だ」的な言い回しで言われる。恋の始まりを尋ねたはずが、気が付いたら推理を聞かされていた。
「レフィーは女性をコレクションしたいとかは……」
「私は本があればいいです」
うーん。清々しいほどの即答だ!