転生したら竜の花嫁⁉ ~雨乞いの生贄にされた私を捨てられた女なら丁度良いと竜が拾いに来ました~
「今考えれば、私の目的を達成するためにも、ミアの『結婚する前にデートをする』という提案は有効ですね。理に適っています」
「うん?」
名(迷)探偵レフィーが、一人納得顔で言葉を続ける。
「女を性的に興奮させ体液の分泌を促せば、通常は酸性の体内が中性に寄る。中性に寄ればアルカリ性の種は死ににくくなります。受胎率を上げるのに効果的です」
「うんん?」
あれ? 何の話してたっけ? 生物? 保健体育?
「ただ、興奮の種類に少し疑問が残りますね。デートが始まってから貴女が楽しそうなのは伝わってくるのですが……キスをしてもいいですか?」
「ムードもへったくれもないね⁉」
即ツッコミを入れている私も、人のこと言えないけどね!
あと話がまったく見えない。どこからどう来てそこへ着地した⁉
「話の展開について行けてないけど、とりあえずキスは『良い感じにデートを進めた最後にする』って書いてあったと思う」
「それは覚えていますが、仕立屋と雑貨屋、家具屋。そのどれにおいても、貴女の性的興奮を促せる気がしません」
「まず性的興奮の物差しから離れよう⁉」
寧ろ仕立屋や雑貨屋でそうなったら困る。そしてやっぱりここまでの話が見えない。
わかるのは、レフィーがデートの手応えに不安を感じているということだろうか。
「場所はそこまで関係ないのよ」
私はもうわからない『ここまでのお話』は放っておいて、彼の不安の払拭に集中することにした。
「大切なのは、色んな場所に一緒に行って。色んな話をして。そうして二人で長い時間を過ごしてみて。それで、この先それよりも長い時間をともにして行けるのかを判断するの」
「判断といっても、貴女は私の番です。人間同士のように、より自分を興奮させる男を選別する必要はありませんが」
デートは相手の選別ときましたか。いやまあ、そういう面がないとは言わないけれども。
「前半はレフィーにも必要でしょう? 私もだけど、レフィーは私が何を好きで何が嫌いかをまったく知らないわけだし。その、性的……興奮のためにも、私が好きなものが何かを把握しておいた方が、都合がいいんじゃない?」
「……ふむ、そういうことですか。確かに、言われてみればそうですね」
ようやく納得したらしいレフィーが、また顎を一撫でする。
それからその手で彼は、私の髪を飾る花に触れてきた。
「でも、ミア。私が『まったく知らない』というのは間違っていますよ。先程のイベリスの花、貴女はとても喜んでいたように見えました。貴女の好きな花の一つを私は覚えた。だからもう私は、貴女をまったく知らないわけではありません」
「……っ」
得意気――に見えるような見えないような顔で微笑むレフィーに、ドキリとする。
イベリスは彼がいうような、特別好きという花ではなかったけれど――
「……そうね」
今日から特別になったのだから、合っている。私はレースの手袋に咲く花を見下ろしながら、レフィーにそう返した。
「うん?」
名(迷)探偵レフィーが、一人納得顔で言葉を続ける。
「女を性的に興奮させ体液の分泌を促せば、通常は酸性の体内が中性に寄る。中性に寄ればアルカリ性の種は死ににくくなります。受胎率を上げるのに効果的です」
「うんん?」
あれ? 何の話してたっけ? 生物? 保健体育?
「ただ、興奮の種類に少し疑問が残りますね。デートが始まってから貴女が楽しそうなのは伝わってくるのですが……キスをしてもいいですか?」
「ムードもへったくれもないね⁉」
即ツッコミを入れている私も、人のこと言えないけどね!
あと話がまったく見えない。どこからどう来てそこへ着地した⁉
「話の展開について行けてないけど、とりあえずキスは『良い感じにデートを進めた最後にする』って書いてあったと思う」
「それは覚えていますが、仕立屋と雑貨屋、家具屋。そのどれにおいても、貴女の性的興奮を促せる気がしません」
「まず性的興奮の物差しから離れよう⁉」
寧ろ仕立屋や雑貨屋でそうなったら困る。そしてやっぱりここまでの話が見えない。
わかるのは、レフィーがデートの手応えに不安を感じているということだろうか。
「場所はそこまで関係ないのよ」
私はもうわからない『ここまでのお話』は放っておいて、彼の不安の払拭に集中することにした。
「大切なのは、色んな場所に一緒に行って。色んな話をして。そうして二人で長い時間を過ごしてみて。それで、この先それよりも長い時間をともにして行けるのかを判断するの」
「判断といっても、貴女は私の番です。人間同士のように、より自分を興奮させる男を選別する必要はありませんが」
デートは相手の選別ときましたか。いやまあ、そういう面がないとは言わないけれども。
「前半はレフィーにも必要でしょう? 私もだけど、レフィーは私が何を好きで何が嫌いかをまったく知らないわけだし。その、性的……興奮のためにも、私が好きなものが何かを把握しておいた方が、都合がいいんじゃない?」
「……ふむ、そういうことですか。確かに、言われてみればそうですね」
ようやく納得したらしいレフィーが、また顎を一撫でする。
それからその手で彼は、私の髪を飾る花に触れてきた。
「でも、ミア。私が『まったく知らない』というのは間違っていますよ。先程のイベリスの花、貴女はとても喜んでいたように見えました。貴女の好きな花の一つを私は覚えた。だからもう私は、貴女をまったく知らないわけではありません」
「……っ」
得意気――に見えるような見えないような顔で微笑むレフィーに、ドキリとする。
イベリスは彼がいうような、特別好きという花ではなかったけれど――
「……そうね」
今日から特別になったのだから、合っている。私はレースの手袋に咲く花を見下ろしながら、レフィーにそう返した。