転生したら竜の花嫁⁉ ~雨乞いの生贄にされた私を捨てられた女なら丁度良いと竜が拾いに来ました~
(一気に鮮やかになったなあ)
応接セットの横にある姿見に全身を映しながら、その場でくるりと回ってみる。
ベースは、クリーム色のワンピース。腰の辺りで切り替えがあり、そこからラッフルスカートになっている。スリットが入った七分袖には、ワインレッドな編み上げ紐の装飾が。そして背中にはジッパー代わりの大量な胡桃ボタン。ボタンに至っては、統一感を保ちつつもすべて色も柄も違っている。
紐は予め結び、ボタンは上から二つまでだけ外して、後はズボッと被って着ましたとも。色気のない着替え方で、申し訳ない。けれども、私が買いに来たのはあくまで普段着るための服。脱がされるための服では、断じてない。だからデザイナーさん、許して欲しい。
「この服は、今すぐ処分します」
レフィーが、私が最初に着ていた白いドレスを手に取る。
家に帰ってからではなく、今すぐとは。早く脱げとは言っていたけれど、まさかそこまで目の敵にしていようとは。
「処分でしたら、こちらで承りますが」
一歩引いて私たちを見ていた店員さんが、スッとレフィーに寄る。
流れるような動きだ。プロだ。
「そうですか、では――」
(ん? 何だろあれ)
店員さんと話しているレフィーの身体が、突然に何本もの青紫色の筋に包まれた。
前世のテレビ番組で見た、静電気によく似ている。パリパリという音も聞こえるから、余計にそれっぽいというか。とにかくレフィーが電気っぽい光を纏っている。
何か魔法でも使っているのかな。――そう思った直後だった。
「いっ⁉」
レフィーの手から、ドレスが消えた。
消えただけなら今朝の花束のこともあり、それほど驚かなかったと思う。
が、
「この灰の処分をお願いします」
「……」
代わりに現れたものが、大問題だった。
(ええー……そこまで目の敵に?)
謎の技術で散らばらず球体でまとまった灰を、レフィーが店員さんに手渡す。
私と一緒に呆然としていた店員さんが、ハッとしてそれを受け取る。既に顔色以外はまったく笑顔が崩れていない。プロだ……。
「それではデートの続きをしましょう、ミア」
他の四着を例によって亜空間に仕舞ったレフィーが、出入口に向かって歩き出す。
私たちを送り出す店員さんのお辞儀が、さっきより深い気がする。目を合わせてはいけない客と認定されたね、これは。
「レフィーって、竜は竜でも何竜なの?」
店の扉を潜りつつ、私はレフィーに尋ねてみた。――ある程度の予想を立てて。
「雷竜ですよ」
「やっぱり……」
それっぽい、すごくそれっぽい。そして電気っぽい光は、ぽいどころか電気だったらしい。
雷竜。麻理枝先輩の漫画で、鉄塔に雷落として粉々にしていたっけ。だからシクル村で雨雲を呼んで土砂降りなんて真似もできたのか。納得。
「ああ、手を繋ぐのは待って下さい」
「え?」
もはや自然な動きで触れようとした私の手を、レフィーにスッと避けられる。
予想外のことに私は、つい彼をまじまじと見てしまった。
「まだ少し帯電しているので、触ってはいけません。……失敗しました」
そう口にしたレフィーのばつの悪い顔が珍しくて、逆に得した気分にさえなってくる。
「じゃあ平気になったら、レフィーから繋いで」
「わかりました」
加えてそんな二つ返事まで来たなら、もう上機嫌になるに決まっている。
私は軽い足取りで、レフィーと並んで街道を歩き出した。
応接セットの横にある姿見に全身を映しながら、その場でくるりと回ってみる。
ベースは、クリーム色のワンピース。腰の辺りで切り替えがあり、そこからラッフルスカートになっている。スリットが入った七分袖には、ワインレッドな編み上げ紐の装飾が。そして背中にはジッパー代わりの大量な胡桃ボタン。ボタンに至っては、統一感を保ちつつもすべて色も柄も違っている。
紐は予め結び、ボタンは上から二つまでだけ外して、後はズボッと被って着ましたとも。色気のない着替え方で、申し訳ない。けれども、私が買いに来たのはあくまで普段着るための服。脱がされるための服では、断じてない。だからデザイナーさん、許して欲しい。
「この服は、今すぐ処分します」
レフィーが、私が最初に着ていた白いドレスを手に取る。
家に帰ってからではなく、今すぐとは。早く脱げとは言っていたけれど、まさかそこまで目の敵にしていようとは。
「処分でしたら、こちらで承りますが」
一歩引いて私たちを見ていた店員さんが、スッとレフィーに寄る。
流れるような動きだ。プロだ。
「そうですか、では――」
(ん? 何だろあれ)
店員さんと話しているレフィーの身体が、突然に何本もの青紫色の筋に包まれた。
前世のテレビ番組で見た、静電気によく似ている。パリパリという音も聞こえるから、余計にそれっぽいというか。とにかくレフィーが電気っぽい光を纏っている。
何か魔法でも使っているのかな。――そう思った直後だった。
「いっ⁉」
レフィーの手から、ドレスが消えた。
消えただけなら今朝の花束のこともあり、それほど驚かなかったと思う。
が、
「この灰の処分をお願いします」
「……」
代わりに現れたものが、大問題だった。
(ええー……そこまで目の敵に?)
謎の技術で散らばらず球体でまとまった灰を、レフィーが店員さんに手渡す。
私と一緒に呆然としていた店員さんが、ハッとしてそれを受け取る。既に顔色以外はまったく笑顔が崩れていない。プロだ……。
「それではデートの続きをしましょう、ミア」
他の四着を例によって亜空間に仕舞ったレフィーが、出入口に向かって歩き出す。
私たちを送り出す店員さんのお辞儀が、さっきより深い気がする。目を合わせてはいけない客と認定されたね、これは。
「レフィーって、竜は竜でも何竜なの?」
店の扉を潜りつつ、私はレフィーに尋ねてみた。――ある程度の予想を立てて。
「雷竜ですよ」
「やっぱり……」
それっぽい、すごくそれっぽい。そして電気っぽい光は、ぽいどころか電気だったらしい。
雷竜。麻理枝先輩の漫画で、鉄塔に雷落として粉々にしていたっけ。だからシクル村で雨雲を呼んで土砂降りなんて真似もできたのか。納得。
「ああ、手を繋ぐのは待って下さい」
「え?」
もはや自然な動きで触れようとした私の手を、レフィーにスッと避けられる。
予想外のことに私は、つい彼をまじまじと見てしまった。
「まだ少し帯電しているので、触ってはいけません。……失敗しました」
そう口にしたレフィーのばつの悪い顔が珍しくて、逆に得した気分にさえなってくる。
「じゃあ平気になったら、レフィーから繋いで」
「わかりました」
加えてそんな二つ返事まで来たなら、もう上機嫌になるに決まっている。
私は軽い足取りで、レフィーと並んで街道を歩き出した。