転生したら竜の花嫁⁉ ~雨乞いの生贄にされた私を捨てられた女なら丁度良いと竜が拾いに来ました~

デートを終えて

 おかしい。
 私は、つい今の今まで王都にいたはず。

「どうしてレフィーの家で目が覚めたの……」

 気付いたらレフィー愛用のソファで寝ていた私は、身体を起こして座る体勢になった。

「ミアの家でもあるので、私の家という表現は正しくないかと」

 まさかあのデートは夢オチ? と思うも、すぐ左隣でツッコミを入れてきたレフィーの手には、王都で買った本が。
 そのレフィーが、目だけをこちらに向けてくる。

「ミアがここにいるのは、ミアが気絶したので引き上げてきたのです」
「……はい?」

 気絶? ……気絶⁉
 何故に気絶した、私。記憶にある最後って、何してたっけ…………って、あ。

「驚きました。何故、鼻で息をしなかったんです? 人間は、それが可能な構造をしていたと思いますが」
「いやいや、驚きましたはこちらの台詞だから。あんな初キスでガッツリくるとは思っていなかったから。普通にパニックになるから」

 涙を見せるヒロイン。その頬にヒーローが指でそっと触れたなら、やはりそっと触れるだけのキスが来ると思うでしょう。まさかあの少女漫画展開から突然ティーンズラブに切り替わるとは、夢にも思わない。

「初キスは独自の統計なのですか? キスはミアの作品において、重ねるだけは百二回、深いキスは二百八十六回でしたので」
「数えたんかいっ」

 そして私も初耳の事実!

「十二回登場した『おんぶ』が体験できてよかったです」
「『おんぶ』が十二回も。定番とはいえそんなに描いていたなんて……って、どこまでおんぶしたの?」

 行きは途中までレフィーに乗って、馬車に乗り換えていた。レフィーと一緒に森に降り、そこから最寄りの馬車止めまで歩く経路だった。帰りも馬車なら、気絶した私をおぶった状態では見咎められそうなものだが?

「王城の庭までですね」
「はい?」

 まったく予測していなかった場所がレフィーの口から出て、つい間抜けな声で返してしまう。

「西区に王城の庭に繋がる地下通路があるんですよ」
「地下通路……」

 それ、王族しか知らないはずの隠し通路じゃ。

「そこから、庭の一画にある外からは何も見えず何も聞こえない結界へ行き」
「結界……」

 それ、王族が身を隠すとか密談するとかに使う秘密の場所じゃ。

「そこで竜に変わって、ミアを乗せて家まで帰ってきました」
「ソウデスカ……」

 「便利なものがあったので利用した」くらい感覚で言われたなら、最早それ以外言い様がない。この竜が人類の敵でなくてよかった。本当によかった。
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