転生したら竜の花嫁⁉ ~雨乞いの生贄にされた私を捨てられた女なら丁度良いと竜が拾いに来ました~
幸せ過ぎる結婚生活
レフィーと電撃結婚(雷竜なだけに)をして、早一ヶ月。
魔族と魔物が暮らす街カルガディウムにも慣れてきた。
――寧ろ、慣れ過ぎた感さえある。
「駄目……これは自堕落な生活過ぎる。何とかしなくては……!」
私はクッキーを片手に、もう片手で頭を押さえた。
起きて食べて、本を読んで食べて寝る。時々レフィーと談話して、食べて寝る。寝るについても初日以来、艶っぽい展開にはなっていなくて。(ただし、キスは激しい)
これでは新婚生活というより、「気の合う同志とシェアハウス始めました」だ。そこんところ、どう思っているんでしょう。私はそんな目で、ソファに並んで座っていた夫の横顔を見つめてみた。
「何とかするとは、何か面白いことでも始めるのですか?」
本から顔を上げたレフィーが、こちらを振り向く。
本当、『面白いこと』に目がないよね、貴方。
「特に何を思い付いたというわけではないけど、ここの生活が快適過ぎて。何かしら貢献しないと、バランスが取れない気がしてならない……」
レフィーも大体私と似たような生活を送ってはいるが、それでも彼の方は例のハンドメイド用の素材を採りに出かけたり、本を片手に何かを作っていたりとまだアクティブだ。
一方、私は完全に休日モードで……いや、それより酷い。元の世界では最低限の家事はやっていた。だがここに住んでからは、それすらもやっていない。
勿論、レフィーがやってくれているということではない。何とここには、ブラウニーが住み着いているのである。
(麻理枝先輩……先輩の夢がここにいますよ……!)
家事妖精ブラウニー。麻理枝先輩が度々ぼやいていたので、その存在はしっかりと覚えている。お菓子をあげる代わりに家事をやってくれる妖精だ。「ブラウニーがうちの汚部屋にも来ないかしら。今日帰ったら綺麗になっているとかない?」と口にする先輩に、「一ヶ月、アニメ専門店に行くのを我慢したら、ブラウニーじゃないけど人間なら雇えると思いますよ」と返すのが、あの頃の日常風景だった。
街でレフィーがやたらお菓子を買っているなと思っていたら、まさか彼らの給料だったとは。「安全なカルガディウムの街で人間のお菓子がもらえるなら、それに越したことはない」と、この家にこぞってやって来るらしい。なるほど。
「貢献なら、ミアはしていますよ。貴女を愛でることで、私の心は穏やかになっていると思います」
「嬉しいけど、そういう曖昧な効果の話ではなくて」
貢献、貢献……。持っていたクッキーを口に放り、モグモグしながら考える。
そんな私の頭を、レフィーがなでなでしてくる。
「ミア」
「うん?」
「物理的に愛でてみましたが、そちらの感触も最高です。確実に効果があります」
「うん、ありがとう。でもそういうことでもなくてね?」
まだなでなでしていたレフィーにそう返事しながら、私はさらに深く考え込み――
「では私の実験に付き合って下さい」
「ぶっ」
レフィーの一言に、一気に深みから引き上げられた。
クッキーを食べ終わっていたのが、不幸中の幸いであった。
魔族と魔物が暮らす街カルガディウムにも慣れてきた。
――寧ろ、慣れ過ぎた感さえある。
「駄目……これは自堕落な生活過ぎる。何とかしなくては……!」
私はクッキーを片手に、もう片手で頭を押さえた。
起きて食べて、本を読んで食べて寝る。時々レフィーと談話して、食べて寝る。寝るについても初日以来、艶っぽい展開にはなっていなくて。(ただし、キスは激しい)
これでは新婚生活というより、「気の合う同志とシェアハウス始めました」だ。そこんところ、どう思っているんでしょう。私はそんな目で、ソファに並んで座っていた夫の横顔を見つめてみた。
「何とかするとは、何か面白いことでも始めるのですか?」
本から顔を上げたレフィーが、こちらを振り向く。
本当、『面白いこと』に目がないよね、貴方。
「特に何を思い付いたというわけではないけど、ここの生活が快適過ぎて。何かしら貢献しないと、バランスが取れない気がしてならない……」
レフィーも大体私と似たような生活を送ってはいるが、それでも彼の方は例のハンドメイド用の素材を採りに出かけたり、本を片手に何かを作っていたりとまだアクティブだ。
一方、私は完全に休日モードで……いや、それより酷い。元の世界では最低限の家事はやっていた。だがここに住んでからは、それすらもやっていない。
勿論、レフィーがやってくれているということではない。何とここには、ブラウニーが住み着いているのである。
(麻理枝先輩……先輩の夢がここにいますよ……!)
家事妖精ブラウニー。麻理枝先輩が度々ぼやいていたので、その存在はしっかりと覚えている。お菓子をあげる代わりに家事をやってくれる妖精だ。「ブラウニーがうちの汚部屋にも来ないかしら。今日帰ったら綺麗になっているとかない?」と口にする先輩に、「一ヶ月、アニメ専門店に行くのを我慢したら、ブラウニーじゃないけど人間なら雇えると思いますよ」と返すのが、あの頃の日常風景だった。
街でレフィーがやたらお菓子を買っているなと思っていたら、まさか彼らの給料だったとは。「安全なカルガディウムの街で人間のお菓子がもらえるなら、それに越したことはない」と、この家にこぞってやって来るらしい。なるほど。
「貢献なら、ミアはしていますよ。貴女を愛でることで、私の心は穏やかになっていると思います」
「嬉しいけど、そういう曖昧な効果の話ではなくて」
貢献、貢献……。持っていたクッキーを口に放り、モグモグしながら考える。
そんな私の頭を、レフィーがなでなでしてくる。
「ミア」
「うん?」
「物理的に愛でてみましたが、そちらの感触も最高です。確実に効果があります」
「うん、ありがとう。でもそういうことでもなくてね?」
まだなでなでしていたレフィーにそう返事しながら、私はさらに深く考え込み――
「では私の実験に付き合って下さい」
「ぶっ」
レフィーの一言に、一気に深みから引き上げられた。
クッキーを食べ終わっていたのが、不幸中の幸いであった。