転生したら竜の花嫁⁉ ~雨乞いの生贄にされた私を捨てられた女なら丁度良いと竜が拾いに来ました~
社会貢献のススメ
「陛下が訪ねてきたなら、仕方ありません。またの機会ですね」
「陛下⁉」
レフィーが身を起こしてくれるも、安堵している場合じゃない。訪問者の正体に、私は自分も起きて慌ててソファから立ち上がった。
だって『陛下』って。竜なレフィーがそう呼ぶのなら、竜王だとか魔王だとか、そういった仰々しい称号を戴いている方なわけでしょう。不敬があってはいけない。
「ミアの肌を見せるわけにはいかないので。寧ろミアそのものも見ないで下さい」
だから不敬があってはいけないというのに……!
台詞も然る事ながら、私を隠すように青年との間に入ったレフィーに、私は青ざめた。
ツンツンとした銀髪の陛下はパッと見好青年風ではあるが、驚いた感じで大きく開かれた藍色の瞳は親近感すら覚えるが、実は腹黒とも限らない。
「あー、なるほど。シナレフィーの番なのか。なら俺たちの仲間だな、歓迎する」
ニッと爽やかに笑われても、笑顔の下でえげつないことを考えていないとも限らない。
「ところでそこのお菓子、食ってもいい?」
いやそんなことないわ。この人、見た目通り良い人だわ。多分。
菓子を盛った籠(ボウル大ほどのサイズ)ごと差し出したレフィーに、「これ前に食ったとき美味かったんだよ」と言う陛下は、どう見ても友人宅に遊びに来た人にしか見えない。もしかして『陛下』って、単なるあだ名なんだろうか。王と臣下ということではなくて。
「ミア。彼は魔王をやっている、ギルガディスです。名前が長くて面倒なので、『陛下』でいいですよ」
やっぱり王なんじゃん!
「待って。お前が俺を陛下呼び始めた理由って、それ⁉」
ポロッと手から落ちたお菓子を慌ててキャッチした陛下は、やっぱり良い人そうだ。
そしてレフィーの『陛下』呼び、「魔王をやっている」という紹介の仕方からして、冗談抜きでその理由だと思われる。
「即位を境に幼馴染みからそう呼ばれるようになり、感傷に浸っていた日々の真相がそれなわけか……」
虚無の表情の陛下。心中お察しいたします。
でもそうか、幼馴染みだったのか。やっぱり「友人宅に遊びに来た人」で正解だったらしい。
「まあいい。それで俺がここに来た用事だけど、最近カルガディウムで人間の女をよく見かけるって聞いたから、様子を見に来たんだ」
「あ……」
陛下の言葉に今更ながらに気付き、私はつい短く声を上げた。
「もしかして私、悪目立ちしてた……?」
やっちまったという気持ちで呟く。
カルガディウムは魔族と魔物の街。そう聞いて私は、「へぇ、そうなんだ。珍しいものや景色が見られるかも」と観光気分で時々出かけていた。
今思えば、何を呑気に思っていたのか。珍しいものって、そんなの一番は人間の私に決まっている。
「目立ちはしていましたが、彼らの多くは別に人間への偏見は持っていませんよ」
「そうなの?」
私の呟きに、レフィーから通常の声量で返事がくる。ついでにビスケットを三枚重ねて口に入れようとしていた陛下からも、「俺も偏見は無い」と返ってくる。耳が良いね、二人とも。
それにしても意外だ。前世で私が読んだファンタジーものは、大体が魔物と人間とがいがみ合う世界観だったのに。
「陛下⁉」
レフィーが身を起こしてくれるも、安堵している場合じゃない。訪問者の正体に、私は自分も起きて慌ててソファから立ち上がった。
だって『陛下』って。竜なレフィーがそう呼ぶのなら、竜王だとか魔王だとか、そういった仰々しい称号を戴いている方なわけでしょう。不敬があってはいけない。
「ミアの肌を見せるわけにはいかないので。寧ろミアそのものも見ないで下さい」
だから不敬があってはいけないというのに……!
台詞も然る事ながら、私を隠すように青年との間に入ったレフィーに、私は青ざめた。
ツンツンとした銀髪の陛下はパッと見好青年風ではあるが、驚いた感じで大きく開かれた藍色の瞳は親近感すら覚えるが、実は腹黒とも限らない。
「あー、なるほど。シナレフィーの番なのか。なら俺たちの仲間だな、歓迎する」
ニッと爽やかに笑われても、笑顔の下でえげつないことを考えていないとも限らない。
「ところでそこのお菓子、食ってもいい?」
いやそんなことないわ。この人、見た目通り良い人だわ。多分。
菓子を盛った籠(ボウル大ほどのサイズ)ごと差し出したレフィーに、「これ前に食ったとき美味かったんだよ」と言う陛下は、どう見ても友人宅に遊びに来た人にしか見えない。もしかして『陛下』って、単なるあだ名なんだろうか。王と臣下ということではなくて。
「ミア。彼は魔王をやっている、ギルガディスです。名前が長くて面倒なので、『陛下』でいいですよ」
やっぱり王なんじゃん!
「待って。お前が俺を陛下呼び始めた理由って、それ⁉」
ポロッと手から落ちたお菓子を慌ててキャッチした陛下は、やっぱり良い人そうだ。
そしてレフィーの『陛下』呼び、「魔王をやっている」という紹介の仕方からして、冗談抜きでその理由だと思われる。
「即位を境に幼馴染みからそう呼ばれるようになり、感傷に浸っていた日々の真相がそれなわけか……」
虚無の表情の陛下。心中お察しいたします。
でもそうか、幼馴染みだったのか。やっぱり「友人宅に遊びに来た人」で正解だったらしい。
「まあいい。それで俺がここに来た用事だけど、最近カルガディウムで人間の女をよく見かけるって聞いたから、様子を見に来たんだ」
「あ……」
陛下の言葉に今更ながらに気付き、私はつい短く声を上げた。
「もしかして私、悪目立ちしてた……?」
やっちまったという気持ちで呟く。
カルガディウムは魔族と魔物の街。そう聞いて私は、「へぇ、そうなんだ。珍しいものや景色が見られるかも」と観光気分で時々出かけていた。
今思えば、何を呑気に思っていたのか。珍しいものって、そんなの一番は人間の私に決まっている。
「目立ちはしていましたが、彼らの多くは別に人間への偏見は持っていませんよ」
「そうなの?」
私の呟きに、レフィーから通常の声量で返事がくる。ついでにビスケットを三枚重ねて口に入れようとしていた陛下からも、「俺も偏見は無い」と返ってくる。耳が良いね、二人とも。
それにしても意外だ。前世で私が読んだファンタジーものは、大体が魔物と人間とがいがみ合う世界観だったのに。