転生したら竜の花嫁⁉ ~雨乞いの生贄にされた私を捨てられた女なら丁度良いと竜が拾いに来ました~

恋情と愛情

 結局、私は(たわら)なまま自宅の玄関まで運ばれた。
 俵の次は小さな子供かはたまた猫か、両脇を持たれてぷらんと空中に吊された後、足からふわりと降ろされる。成人女性を「すとん」ではなく「ふわり」なのだから、レフィーは相当力持ちなようだ。減速せずにここまで来て、まったく息も上がっていないようだし。
 ふんふんと感心していて、だから私は身構えるのが遅れた。

「キスの時間です」
「! んむ……っ」

 決して乱暴ではないが、ガッという感じで両頬を掴まれたと思えば既にレフィーの唇はゼロ距離。さすがに一月以上こんな調子なので、多少は慣れた。が、今回の私は身構えていなかったせいでよろけてしまった。
 トンッと壁に背が当たる。半歩片足を下げたせいで空いた脚の隙間に、まさに隙を見逃さずレフィーの脚が侵入してくる。加えて、上体を斜めにした私にピッタリ同じ斜めの角度で、身を寄せてくる。
 私が体勢を崩したのをいいことに、レフィーはいつも以上に深く口づけてきた。

(気持ち良くて……ぼぅっとする……)

 キスの時間を始めた頃は、ゾクゾクとして溶かされる感覚があった。けれど最近は、見た目の激しさに反して、緩やかに(とろ)けるようなキスに変わってきている。
 きっと私の反応を見て、合わせていっているのだろう。今もまた、私が「気持ちいい」と思っているのが筒抜けなのだろう……うぅ、恥ずかしい。

「ミア。おかえりなさい」
「ん……ただいま。レフィー、おかえりなさい」
「ええ、ただいま戻りました」

 キスの合間に、取って付けたように挨拶の言葉を口にするレフィー。それに返す私。
 レフィーとのキスは好きだ。しかし、何度でも言わせて欲しい、これは『挨拶のキス』ではないと。
 今日なんて場所が場所だけに、このまま「ベッドまで待てない」とかいって、なだれ込むラブシーンに近――

「ひゃぁっ」

 キスが口から頬に移って油断したところを、耳を甘噛みされて肩が跳ねる。
 そうだね、こんなことしてたね、玄関で。どれかの漫画で描いた覚えがあるよ。でもって、それやっぱり「ベッドまで待てない」のパターンに入った奴だったと思う!

「ミア。うやむやになっていた恋愛進展度を補いたいです」
「ままま、待ってレフィー。私は、軽め。もっと軽めを希望!」

 とうとうその場に座り込んでしまった私。またも私に合わせて座ったレフィー。
 同じく座ってはいても、くたりとしている私に対し、レフィーは片膝を立てたピシッとした姿勢でいる。こちらに覆い被さるように距離を詰めた彼の上体が、私の視界を埋めていた。
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