転生したら竜の花嫁⁉ ~雨乞いの生贄にされた私を捨てられた女なら丁度良いと竜が拾いに来ました~

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 私の必死さが伝わったのか、残念なイケメン(確定)は手を止めてくれた。

「何か?」

 ――伝わってなかったようだが、取り敢えず止めてくれた。
 止めてはくれたが、安心はできない。その手はまだ私のスカートにある。何よりこの男、首を傾げて私を見ている……!

「何か? じゃないから。普通、外でこういうことはしないし、いきなりもしないからっ」

 また無表情になった男性の圧力(顔面偏差値による)にもめげずに、早口で抗議する。さっきもうめっちゃ地で叫んだし、言葉遣いを取り繕う気は最早ありません。

「――私の読んだ本には、ありましたが?」
「⁉」

 誰よそんな本を書いたのは! けしからん! 読ませて!

「それは特殊、特殊なの! 恋のステップを踏ませて! 他愛ない会話から始まって、段々と仲良くなって、手を繋いで、デートを重ねて!」
「? そのような内容の本は、見たことがありませんが」
「私の家にはあるのよ!」

 さらに首を傾げないで!
 何でそんな本を鵜呑みに。それとなく教えてくれる親兄弟は――って、竜だったわこの人! そりゃあ、いないね!

「私が読んだことの無い本を、貴女が持っていると?」

 おや。スカートから手が離れましたよ? 本と聞いて目の色を変えるとは、さてはこの人、本の虫とかいうタイプでは。

「それは取りに行きましょう。今すぐに」

 男性がスッと立ち上がる。
 私も手を引いて立ち上がらせてくれる。
 今までの攻防は何だったのかと問いたいほどに、あっさりと。はい、この人、本の虫確定。それも重症とみた。

「さあ、案内して下さい」
「ふふっ、……わかったわ」

 まるで子供のように、そわそわしながら急かす彼に、つい笑みが零れる。
 私は、今朝、重い気持ちで連行される罪人のように出た家に、不思議なほど軽い足取りで向かった。
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