転生したら竜の花嫁⁉ ~雨乞いの生贄にされた私を捨てられた女なら丁度良いと竜が拾いに来ました~
思い出を消さないで
私とレフィーは先回りをして、邸の前庭に潜んでいた。道を行かず畑を突っ切れば、実は半分程の距離でここまで来られる。私たちのようにぬかるみに足を取られる心配がなければという、前提はいるが。
レフィーは背の高い木の裏に、私のその横にある植木の陰にしゃがんで待つ。しばらくして、泥棒はようやく姿を現した。
欲張って荷物が重かったのか、泥棒は目に見えて疲れていた。先程から、数メートルおきに立ち止まっては、よろよろと進んでいる。これ以上盗みを働いても持ち運べないのではと思うほどだ。
(もしかして、ここを根城にしているの?)
泥棒の様子から行って、彼は一仕事終えて帰ってきたのかもしれない。
そう推測して見ていれば、泥棒は玄関扉の前で麻袋を下ろした。そして案の定、何の警戒も無しに扉を開けた。
鍵が回った音がしたので、こじ開けたのではなく、どこかから入手した鍵を使ったらしい。鍵を盗まれるなんて、ケチな叔父さんにしては珍しい失敗をしたものだ。
『どうやらここに住み着いているようですね』
「⁉」
いきなり念話で話しかけてきたレフィーに、私は驚いて危うく声を上げかけた。
以前、竜なレフィーがしてきたので、念話自体は初めてじゃない。しかもそのときは、姿が変わっても会話できるのは便利だ、としか思わなかった。
今回は先入観というか、人の姿のまましてきたので動揺した。その姿でもできたのね、念話。
『やはり向かっていたのはこの家でしたか。ここは覚えています。ミアの漫画を取りに来ました。ミアが暮らしていた家ですね?』
こちらへちらりと目だけを向けてきたレフィーに、私は頷いてみせた。私は念話は聞けても送れないので、ジェスチャーで返すしかない。
「例えもうミアが住んでいなくとも、ミアがいた場所に盗人が住むというのは面白くありません」
って貴方、もう普通に話しているし! しかも泥棒の前に飛び出しているし!
まあレフィーなら、相手が刃物を持っていようが銃器を持っていようが、関係無いのかもしれないが。
私は素手でも負けること必至なので、このまま隠れさせてもらう。
「誰だ⁉」
泥棒が、いきなり現れたレフィーに比喩ではなく跳び上がる。
大声まで上げて――そのことで、私は彼の正体に気付いた。
(叔父さん?)
泥棒の顔を注視して、そこでやっと聞き間違いでないことがわかる。
私の知る叔父さんは、いつも王都で売っているような上等な服を着ていた。だから、村の一般的な男性と変わらない格好だったことで、今まで気付くことができなかった。
飾り気の無い、麻を織った農作業向けの服。このような服を、初めから叔父さんが持っていたとは考えにくい。先程のようにどこかの家から拝借したものと思われる。
上等な服というのは、手入れが難しい。管理してくれる人がいなくなったことで、駄目にしてしまったのだろう。
「待て、見覚えがあるぞ。そうだ、アルテミシアと邸の側を歩いているのを見た。あの竜の飼い主なのか⁉」
言うなり、叔父さんがキョロキョロと辺りを見回す。儀式の日に現れた竜を連れてきていないか、確認する素振りに見えた。
しばらくそうしてから、叔父さんが安堵の表情になる。竜の姿が見えないことにほっとした、といったところだろうが……それが目の前にいるのよね。本人に向かって飼い主とか言っちゃったよ、叔父さん。
「ここへ来た私たちを見たというなら、この人間がミアを蔑ろにしていた叔父なわけですか」
「あいつがそう言ったのか⁉ 何て言い様だ!」
竜がいなければレフィーなんて、ただの若造と思っているのだろう。格好と違って横柄な態度は、私のよく知る叔父さんのままだった。
レフィーは背の高い木の裏に、私のその横にある植木の陰にしゃがんで待つ。しばらくして、泥棒はようやく姿を現した。
欲張って荷物が重かったのか、泥棒は目に見えて疲れていた。先程から、数メートルおきに立ち止まっては、よろよろと進んでいる。これ以上盗みを働いても持ち運べないのではと思うほどだ。
(もしかして、ここを根城にしているの?)
泥棒の様子から行って、彼は一仕事終えて帰ってきたのかもしれない。
そう推測して見ていれば、泥棒は玄関扉の前で麻袋を下ろした。そして案の定、何の警戒も無しに扉を開けた。
鍵が回った音がしたので、こじ開けたのではなく、どこかから入手した鍵を使ったらしい。鍵を盗まれるなんて、ケチな叔父さんにしては珍しい失敗をしたものだ。
『どうやらここに住み着いているようですね』
「⁉」
いきなり念話で話しかけてきたレフィーに、私は驚いて危うく声を上げかけた。
以前、竜なレフィーがしてきたので、念話自体は初めてじゃない。しかもそのときは、姿が変わっても会話できるのは便利だ、としか思わなかった。
今回は先入観というか、人の姿のまましてきたので動揺した。その姿でもできたのね、念話。
『やはり向かっていたのはこの家でしたか。ここは覚えています。ミアの漫画を取りに来ました。ミアが暮らしていた家ですね?』
こちらへちらりと目だけを向けてきたレフィーに、私は頷いてみせた。私は念話は聞けても送れないので、ジェスチャーで返すしかない。
「例えもうミアが住んでいなくとも、ミアがいた場所に盗人が住むというのは面白くありません」
って貴方、もう普通に話しているし! しかも泥棒の前に飛び出しているし!
まあレフィーなら、相手が刃物を持っていようが銃器を持っていようが、関係無いのかもしれないが。
私は素手でも負けること必至なので、このまま隠れさせてもらう。
「誰だ⁉」
泥棒が、いきなり現れたレフィーに比喩ではなく跳び上がる。
大声まで上げて――そのことで、私は彼の正体に気付いた。
(叔父さん?)
泥棒の顔を注視して、そこでやっと聞き間違いでないことがわかる。
私の知る叔父さんは、いつも王都で売っているような上等な服を着ていた。だから、村の一般的な男性と変わらない格好だったことで、今まで気付くことができなかった。
飾り気の無い、麻を織った農作業向けの服。このような服を、初めから叔父さんが持っていたとは考えにくい。先程のようにどこかの家から拝借したものと思われる。
上等な服というのは、手入れが難しい。管理してくれる人がいなくなったことで、駄目にしてしまったのだろう。
「待て、見覚えがあるぞ。そうだ、アルテミシアと邸の側を歩いているのを見た。あの竜の飼い主なのか⁉」
言うなり、叔父さんがキョロキョロと辺りを見回す。儀式の日に現れた竜を連れてきていないか、確認する素振りに見えた。
しばらくそうしてから、叔父さんが安堵の表情になる。竜の姿が見えないことにほっとした、といったところだろうが……それが目の前にいるのよね。本人に向かって飼い主とか言っちゃったよ、叔父さん。
「ここへ来た私たちを見たというなら、この人間がミアを蔑ろにしていた叔父なわけですか」
「あいつがそう言ったのか⁉ 何て言い様だ!」
竜がいなければレフィーなんて、ただの若造と思っているのだろう。格好と違って横柄な態度は、私のよく知る叔父さんのままだった。